二人の姫と犬吠埼

前回の記事「『千と千尋の神隠し』と龍宮城」では、このアニメ映画で表現されていた「油屋」が、日本神話に登場する龍宮城をモデルにデザインされたのではないか、そして龍宮城の姫神として登場する豊玉姫(とよたまひめ)、玉依姫(たまよりひめ)が、それぞれアニメキャラの「千尋」と「リン」に対応しているのではないかと仮定しました。

画像1:千と千尋の神隠しからリンと千尋

再三述べている様に、神話と同映画作品との比較による構造分析から、これまでに次の関係が分っています。

 千尋 = タクハタチヂヒメ(または スズカヒメ)
 リン = アメノウズメ(または サルメノキミ)

また、前回の考察では次の関係が導かれました。

 千尋 = 豊玉姫
 リン = 玉依姫

つまり三段論法的には次の関係が成立すると言えます。

 豊玉姫 = タクハタチヂヒメ
 玉依姫 = アメノウズメ

これの他にも様々な事例を取り上げてきましたが、どうやら、日本神話の中では、一人の実在した人物に複数の別名を与えることによって、それぞれ別のキャラクターとして話を進めることが普通に行われている様なのです。

それが単なる別の呼び名とかではなく、明らかに異なる人物として描かれている点には特に注意しなくてはなりません。なんだか、神話に対するロマンチシズムをぶち壊すようで申し訳ないのですが、日本神話における八百万(やおろず)の神々とは、実は

 水増しされた神々

と言い換えることができるのかもしれません。

逆に言えば、上代(神武以前)の日本古代史は、神話というファンタジーとして記述しなければとても表現できないほど、複雑なものであっただろうと想像されるのです。

今回は、この豊玉姫と玉依姫について、更にもう少し周辺情報を取り上げてみたいと思います。

■千と千尋と犬吠埼

次の2021年の過去記事では、「千と千尋~」の舞台モデルの一つが、現在の千葉県銚子市、旭市周辺であることを考察しています。

 ・千と千尋の隠された神 
 ・千と千尋の隠された神(2) 

ここでの結論は、取り敢えず油屋のモデルになったのは銚子市内にある「猿田神社」としましたが、他にも三重県伊勢市内に実在した女郎茶屋の「油屋」もアニメデザインに大いに参考にされたのだろうと見ていました。

しかし今回、そのデザインのベースが日本神話に出て来る龍宮城にありそうなことが分かったので、ここでもう一度、銚子市・旭市周辺の状況について調べてみます。

4年前の考察では、龍宮城関係の神名については全く考慮していなかったので、今回は二人の龍宮城の姫神について、どちらかの神名及び、龍宮城繋がりと思われる神名を主祭神にしている神社を検索でピックアップしてみました。

その結果が次の図です。

画像2:龍宮城関係の神々を祀る神社(猿田神社は除く)

他にも該当する神社はあるとは思いますが、取り敢えず以上の図だけでも、密集とは言わないまでも、関係する神社がそこそこ鎮座しているのが分ります。

それぞれの神社の祭神をまとめたのが次のリストになります。

  社名    主祭神             所在地
 ——————————————————————————
 東大社    玉依姫 (旧名:八尾社)    東庄町宮本
 豊玉姫神社  豊玉姫            香取市貝塚
 編玉神社   豊玉姫 (編玉豊玉姫神社)   香取市阿玉台
 海津見神社  豊玉姫            旭市下永井
 二玉姫神社  玉依姫            旭市中谷里
 玉崎神社   玉依姫            旭市飯岡

 渡海神社   綿津見大神 (併:猿田彦)   銚子市高神西町
 雷神社    天穂日 (併:別雷命)     旭市広見

「豊玉姫」と「玉依姫」は日本神話の中でもメジャーな女神なので、この分布が特別多い、あるいは偏在しているとすぐには断定できませんが、それでも自分がこれまで地方の神社を見てきた感覚から言って、やはり多いのではないかと思います。

中でも「玉崎神社」は、昨年の記事「サキタマ姫と玉依姫」で、埼玉県行田市にある前玉神社(さきたまじんじゃ)と共に、その祭神についての考察を既に行っています。この神社は下総國二宮ということで、同地区でも格の高い神社とされており、そこから、玉依姫のがここでは特に大事にされているのが窺われるのです。

次に注目すべきなのが、神話の中で豊玉姫の父とされる綿津見の神を祭神とする渡海神社で、やはり龍宮城繋がりであること、また雷神社(いかづちじんじゃ)に合祀されている「別雷命」(わけいかづちのみこと)とは、京都の上賀茂神社の祭神「賀茂別雷神」(かもわけいかづちのかみ)のことであり、上賀茂社の伝承においてこの神の母に当たるのが下鴨神社の祭神、玉依姫なのです。

雷神社の祭神は上賀茂神社から分祀されたと記録に残されているようですが、やはりこの地が玉依姫所縁の地であればこそ、そのような計らいが為されたと考えられるのです。

ちなみに、「別雷命の母 = 玉依姫」という関係から、

  別雷命とは神武天皇の別称である

ことが分かるのです。それは以前掲載した次の系図を見ても明らかでしょう。

画像3:三嶋神から神武天皇までの系図

問題なのは、現皇室の皇祖と呼ばれる神武天皇の母親がアニメキャラ(リン)のモデルにされ、しかもそれが千葉県銚子市周辺と大いに関係ありそうだということなのです。

これは繰り返しになりますが、1985年8月12日に123便事件が起きたその時期、NHK朝のテレビ小説で放映されていたのが、沢口靖子さん主演の「澪つくし」であり、

 ドラマの舞台が銚子

であったことに、同事件との大きな繋がりが見え隠れするのです。因みに澪(=ミオ)とは猿田彦の別名であり、それについては「椿海とミヲの猿田彦」で既に説明済です。

以上から、私が何故

 123便事件は現天皇家の出自と関係がある

とするのか、お分かり頂けたでしょうか?



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