壁画が語る古代の大洪水事象

ここまで、記紀の暗号文的解読と最近のアニメ表現の比較から、古代期に実際あっただろう大洪水の発生と方舟の存在、そしてその時代に生きただろう実在人を、特に姫(高貴な女性)たちについて考察をしてきたつもりです。

アニメがこのような比較資料に成り得るのは、F時代(大洪水時代)の記憶をどうやら意図的にアニメのストーリーに忍び込ませている痕跡が、特に大ヒット作品と呼ばれるものについて多く見られるからです。

例えば、本ブログで取り上げてきたものだけでも、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」、「君の名は」、「天気の子」、そして最近の作品として「超かぐや姫!」などが挙げられます。

どうしてそんな面倒な細工をするのかについては、歴史考察の範疇を超えるので詳しいことは控えたいと思いますが、歴史的プロットの挿入が大衆心理の操作に極めて効果的だからではないかと私は見ています。

■F時代の存在を示すもの

大洪水と方舟と言えば旧約聖書の創世記がよく知られています。いわゆる「ノアの方舟」と言われているものですが、この伝承自体は聖書よりも古いシュメール時代に流布していたのではないかと言われています。

要するに聖書が編纂される以前に古代バビロニアでは知られた話であり、ノアの方舟とは、聖書向けに改変された大洪水伝承の一つなのではないかという議論は以前から存在するのです。

そして、大洪水&方舟伝承はオリエント地方に限らず、どうやら日本でも流布していたらしいという話を、次のブログ記事でシュメール語との関連で既に触れています。

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日本国内において、大洪水との関係を示すものはこれだけでなく、実は古墳の石室に描き残された装飾画からもそれが窺えるのです。

■竹原古墳の壁画に描かれたもの

福岡県は古墳など遺跡が多く残されている土地ですが、同県宮若市の竹原古墳は石室の内壁に描かれた壁画がつとに知られています。

画像1:竹原古墳の壁画
引用元:宮若市プレスリリースから

私も現地の調査に向かったことがありますが、一般展示されているので、ガラス窓越しに直接その壁画を見ることができます。

この絵が何を意味するのか諸説あるのですが、宮若市のパンフレットには次のような解説が書かれています。

画像2:竹原古墳の壁画解説
引用元:Beyond the bridgeさんのブログから

読んでお分かりの通り、壁画のパーツそれぞれについて説明こそしていますが、結局のところ、これでは壁画全体が何を表現しようとしているのか見えてきません。

宮若市のプレスリリースでも「この絵の解釈としては四神思想、龍媒信仰、葬送儀礼の表現、騎馬民族到来など様々な説がありますが、・・・」とあり、何となく大陸や半島の影響を受けたのだろういう、漠然としたことしか説明されていないのです。

実は、この壁画、大洪水&方舟伝承を元に分析すると、その意味がくっきりと浮かび上ってくるのです。

ここで、次の若宮市制作の画像にて番号毎に私から解説を加えたいと思います。

画像3:竹原古墳の壁画(解説番号付き)
引用元:宮若市プレスリリースから
※黄色の番号はオリジナル。緑色の番号は私が描き加えたもの

(1) 解説では翳(さしば)とありますが、単なる日除けでないのは、そこに描かれている7本の葉っぱのような模様から判定できます。これはシュメール文明期のレリーフに見られる王と女王の対を表わす文様ですし、ユダヤ教で用いるメノラーの形状でもあります。これについては更に詳しく見る必要があります。

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(2) 三角連続文は古代エジプト語で「水」を表わす象形です。発音は「me(メ)」で、これはシュメール語で水を表わす「a(ア)」の屈折形「me(メ)」と共通しています。もうお気づきかと思いますが、日本語の「雨(あめ)」の語源は古代オリエント語由来とも考えられ、壁画で水が縦に描かれいるのは、降りしきる雨を抽象的に表現したものだとも言えるのです。

(3) これが船だとすれば、洪水伝承上のコンテキストから「方舟」を指すと考えられます。

(4) 明らかに波なのですが、三角連続文で示された「水」とは表現が異なります。これは大水または大津波を表わすのでしょう。これこそが大洪水を表わすサインと見られるのです。

(5) わざわざ人物を描いていることから、古墳建設当時においても極めて重要だと認識されていた人物なのでしょう。もちろんF時代に関係する人物なのは間違いなく、それが誰なのか、私も特定を急いでいます。

(6) 解説では小舟または月とありますが、壁画全体の意味から舟と捉えるのが正しいでしょう。ただし、(3)の方舟とは異なるという点が(7)と(9)の表現の違いから窺えます。

(7) 長い脚を有する四つ足動物であり、龍でないことは明らかです。ただし、(9)の普通の馬とも違う、おそらく「馬のようなもの」を敢えて強調した表現です。漢字の「馬」の音読みである「ma(マ)」はシュメール語では「舟」を意味し、この古墳が築かれたとされる6世紀には漢字が使われ始めていたので、音声記号として馬の絵が使用されたと考えられます。馬の形状の違いは、(3)と(6)の舟の意味が異なることを示しています。

(8) これは壁面の汚れだと思われたらしく、特に説明は加えられていませんが、私はこれが鳥、形状的には「燕」ではないかと考えられます。「方舟」と「燕」の関係性については「鹿の子キャラクターと古代女王」で既に述べています。

(9) これは普通の馬であり、足元にある(3)の方舟を指しているのでしょう。

以上、オリエント地方の古代言語をベースに壁画の意味を解釈すると、全パーツにおいて一貫した意味が見えてくるのです。それが

 大洪水と方舟

なのですが、この壁画には翳(さしば)とされる柱状の物体は何なのか、中心いる人物(おそらく男性)は誰なのか、舟の違いとは何なのか、そしてこれらは大洪水という危機的状況の中で何が起きたことを示しているか、などいくつか解読すべき問題が残されています。

実はこれらについのて答が最近のアニメ映画「超かぐや姫!」で一部示されているのですが、まずはゆっくりと周辺知識から埋めて行きたいと思います。

画像4:「超かぐや姫!」のかぐや(右)とヤチヨ(左)
この2人の関係性がポイントです

■玄武と朱雀

この石室の入り口には玄武と朱雀も描かれているのですが、通常の四神獣思想から紐解けば

 玄武:北、青龍:東、朱雀:南、白虎:西

と方位を示すだろうと捉えるのが普通です。

像4:石室の入り口に描かれた玄武と朱雀

しかし、竹原古墳には玄武(北)と朱雀(南)はあっても、青龍(東)と白虎(西)は描かれていません。この不足を埋めるために(3)を龍と解釈されたのかもしれませんが、それならば白虎もどこかに描かれていないとおかしな話になってしまいます。

おそらくこの2つは、北と南の何かを示す特別な記号であると考えられるのですが、記紀を読むとそれが何に対応するのか見えてきます。

それについては、また別途お伝えしましょう。


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