月のかぐや姫と龍宮の乙姫

先月の記事「超かぐや姫とツクヨミ」では、話題?のアニメ映画「超かぐや姫!」と日本神話との関係性について述べましたが、その中で、同映画の中に大洪水を表現しているのでは?思われるシーンがあるのを指摘しています。

画像1:大洪水を表現していると思われるシーン

これまで述べてきたように、日本神話の中で伊弉諾・伊弉冉(イザナギ・イザナミ)から神武天皇に至る時代、私はこれをF時代と呼んでいますが、日本書紀や古事記では神代、あるいは上代と呼ばれるこの時代は、どうやら古代期に発生した大洪水事象と関係するだろうと推測されるのです。

もしも「超かぐや姫!」が、このF時代の実在を認識し、それを作中に取り入れているのならば、明らかに同映画の原案となっただろう「竹取物語」が、どのようにF時代と関係を持つのかもう少し考察する必要があるのです。

■竹取物語と水

「竹取物語」は「かぐや姫」として日本人なら一度はそのお話を耳にしたことはあると思います。

Wikiペディアではその概要を次のように記述しています。

 『竹取物語』(たけとりものがたり)は、平安時代前期
 に成立した日本の物語。「現存する日本最古の物語」と
 される。

 概要

 竹取の翁(たけとりのおきな)によって光り輝く竹の中か
 ら見出され、翁夫婦に育てられた少女かぐや姫を巡る奇譚。
 『源氏物語』に「物語の出で来はじめの祖(おや)なる竹取
 の翁」とあるように、日本最古の物語といわれる。9世紀後半
 から10世紀前半頃に成立したとされ、かなによって書かれた
 最初期の物語の一つである。いつからかは不明だが『かぐや姫』
 の題名で絵本・アニメ・映画など様々な形において受容されて
 いる。

あらすじについてはここで説明する必要もないほど読者の皆さんがご存知だと思いますが、そんな極めて有名な物語が、実は成立年も作者も分かっていないというのが何ともミステリアスです。

F時代とは、平安時代から更に700年程度は前の時代を指しますから、時代的には両者の間に直接的な関係はないように見えます。

かぐや姫は物語の最後で、求婚者たちを残して月の都へ去って行くのですが、「月」と「水」との関係は、海の潮汐が月の引力によって大きく影響されているという一般的な説明の中に見出すことができます。

「月」と「水」が影響し合っていることは当然昔の人々も知っており、「月」が「臓」や「胴」、「脚」など身体の部分を表わす漢字の部首として使われているのは、人間の身体が大部分「水」でできていることを経験的に分かっていたからだと考えられます。

「月と水」との関係がこのように深く、古代の人々にその認識があったことまでは分かるのですが、これだけでは大洪水との関係性を指摘するのは無理があります。

■異世界に帰還する姫

そこで、今度は「かぐや姫」そのものの生い立ちに注目してみます。その概要はおおよそ次のようになるのではないでしょうか。

 ・竹の中に赤ん坊として現れる
 ・翁に養育され美しい女性と成長する
 ・貴人たちの求愛を受け、無理難題を課させる
 ・月からの迎えに従い月の都に帰る

これを更に短くまとめると

 地上に現れた姫が、様々の出来事を経て最後に故郷(月)に帰還する

のように非常にシンプルな物語となります。

この省きに省いたあらすじで強調されるのは

 姫 と 異世界(ここでは月)

であり、異世界から来て異世界に去ってしまうところが、通常の人間ドラマとは大きく異なる点であると言えるでしょう。

このように、物語の骨格だけを取り出すと、実は日本神話の中に同じようなプロットのシーンがあるのに気付きます。

 乃ち草(かや)を以て児(みこ)を裏(つつ)みて、海辺
 (うみへた)に棄てて海途(うみのみち)を閉ぢてただ
 に去ぬ

 日本書紀 神代下 

このシーンは、失くした兄の釣り針を探しに海中に向かった彦火火出見(ひこほほでみ)が、海中にある海神(わたつみ)の宮で豊玉姫(とよたまひめ)を見初め、妹の玉依姫(たまよりひめ)と共に地上に連れ帰ったところ、絶対に見るなと言われた豊玉姫のお産を覗き見してしまい、龍の姿になったところを見られた豊玉姫はそれを恥じて、生まれた子を置いて海中に帰って行くという、まさに豊玉姫の故郷への帰還を描いているものなのです。

これは

 地上に現れた姫が、様々の出来事を経て最後に故郷(海)に帰還する

と要約することができ、強調されるのはもちろん

 姫 と 異世界(ここでは海)

なのです。

この神話はやはり昔話の「浦島太郎」のモデルと考えられ、この場合の豊玉姫は浦島太郎伝説の記述を借りれば

 龍宮の乙姫

と表現することが可能なのです。

先に述べた通り、「月」は「水」と同意ですから、「かぐや姫」も「龍宮の乙姫」も実は同根の話だと考えられるのです。

具体的には、おそらく「かぐや姫」とは、平安時代前後に設定変更されてリバイバル登場した「龍宮の乙姫」物語だったのかもしれません。

そして、豊玉姫、玉依姫は以前からお伝えしているようにF時代ど真ん中の人物と想定されるので、「超かぐや姫!」が大洪水をテーマに扱うことに全く矛盾はないのです。

■二人のかぐや

ネタバレになって申し訳ありませんが、「超かぐや姫!」では二人の少女「かぐや」と「ヤチヨ」が実は時を隔てた同一人物であることが終盤で明かされています。

注目すべきは月の女王は二人居るという点であり、海神の宮(龍宮城)から訪れた女王もやはり二人居るところに共通性が見られます。

この二人の女王、あるいは二人の姫という関係性は、前回の記事「壁画が語る古代の大洪水事象」で紹介した竹原古墳の壁画、そこに描かれた翳(さしば)と呼ばれる物体の意味と大きく関連してくるのです。

画像2:(1)のうちわのようなものが翳(さしば)

管理人 日月土


コメントする