市杵島姫と少彦名

神話の誓約(うけい)から始まり、特にここ数回は宗像三女神を取り上げてきました。これまでにも指摘し続けてきたことですが、どうやら、同一の神に対して幾つもの変名・別名が名付けられ、それがまるで別々の神様の如く神話の中に登場していることが分かってきました。

宗像三女神についても同様で、本ブログで分析したその分類はおおよそ次の様になることが分かってきたのです。

画像1:宗像三女神の別名・変名一覧
(当ブログの分析による)

上図のタギツ姫およびタゴリ姫については、豊玉姫と玉依姫としてこれまで扱ってきたので、今回は三女神の一人、イチキシマ姫(市杵島姫)に焦点を絞って考察したいと思います。

■市杵島姫と厳島神社

イチキシマ姫(市杵島姫)と言えば、一般には全国に点在する名前の読みがそっくりな厳島(いつくしま)神社の御祭神として良く知られています。

厳島神社で有名なのは、何といっても「安芸の宮島」として知られる広島県の宮島にある厳島神社でしょう。この神社の御祭神は言うまでもなく、イチキシマ姫を含む宗像三女神なのです。

画像2:宮島の厳島神社の御祭神
厳島神社公式ページから

厳島神社は少し大きな神社の摂社・末社として置かれていることも多く、円形の池の真ん中に島を作りそこに橋を架け、その島の中央に建てられたお社や祠が厳島神社であるパターンは全国どこでも見られる光景です。

画像3:三嶋大社の厳島神社

画像1でイチキシマ姫(市杵島姫)の別名に「弁才天」と書き加えていますが、イチキシマ姫の神仏習合の神名として「弁才天」もしくは「弁財天」、いわゆる弁天様として呼称されることがあります。これはインドのヒンズー教の女神「サラスヴァティー」を指すと言われていますが、七福神唯一の女神として、昔から全国で広く信仰の対象とされているのはもはや説明の必要はないでしょう。

どうして、厳島神社は池の中、あるいは宮島のように海上にあるのかについては、サラスヴァティーが元々同名の川の女神であること、すなわち水の女神であることに起因すると考えられているようですが、私はそれだけではないと見ています。

日本のお城が周囲に堀を巡らし水を張るのは、確かに実利的な防御手段の一つであることは間違いないのですが、同時にこれは呪術的な意味での「結界」を表し、心理的な見えない壁を構築することと同じだと言えます。

この結界、外に向ければ防御壁として機能しますが、内に向ければどのように機能するのでしょうか?結界でぐるり周囲を囲んでいるのですから、米国のアルカトラズ島と同じ「牢獄」あるいは「締め」の意味を持つのです。

神社の鳥居や注連縄が、そこが俗世と聖域を区別する境界を意味するのではなく、実は

 神を締める(神封じ)

という呪術的意味合いを持つことは、(真)ブログ記事「今日も鳥居で神封じ?」で既に述べているので、ここで改めて確認してみてください。本来、日本国土は全て神様の「御神体」という考えなのですから、そこに境界を設ける必要性などないのです。

このように解釈すると、鳥居内において更に結界を張り巡らされるイチキシマ姫は、一部の人々にとって非常にやっかいな神様、できれば人前に絶対に現れてもらいたくない神様という風にも取れるのですが、果たしてどうなのでしょうか?

■あのアニメに市杵島姫も登場していた

かつて本ブログでは、宮崎駿監督の大ヒット映画「千と千尋の神隠し」が日本神話をベースに構成されていることを指摘し、その上で、登場するキャラクターがどの神様(あるいは人物)をモデルにしているのか特定してきました。

その時の反映が画像1にも表れているのですが、タクハタチヂ姫(=千尋)とアメノウズメ(=リン)まで特定したものの、三女神の中でイチキシマ姫だけは、これまで同作品の構造分析で見つけられなかったのです。

しかし今回、鹿の子アニメのキャラクターと宗像三女神との関係性を見出した結果、同映画作品にもイチキシマ姫をモデルにした描写があることが分かったのです。

それは次の画像を見ればお分かりになるはずです。

画像4:2つのアニメで表現された「めめめ」のサイン

要するに、「千と千尋の神隠し」ではキャラクターとしては登場せず、象徴として「め」が3つのサインとして表現されていたのです。これが分かったのは、まさに鹿の子アニメの奇抜なキャラ名「馬車芽めめ(=イチキシマ姫)」によるものだったのです。

また、これが分かると、主人公の千尋の苗字がどうして「荻野」(おぎの)だったのかも見えて来ます。

この映画が上映された2001年、アイドル歌手としては既に第一線を引いていたものの、1985年の大ヒット曲「ダンシング・ヒーロー」を歌った

 荻野目洋子

さんのことは、まだ多くの人の記憶に残っていたはずです。

もちろん、荻野さんという苗字の方は普通にいらっしゃるのですが、当時の人々の多くは「荻野」とくれば「目」という連想が自然に働いたはずです。そして、背景画像にしてはやけに目立つ「め」の看板を見れば

 目(め)がない荻野 → 「め」

と無意識にこのひらがなを強調して捉えていたと想像するのは少し考え過ぎでしょうか?

そうなると、この「め」の字に隠された記号の意味を探る必要が出てくるのです。

■市杵島姫と少彦名

駿河湾の東岸にある静岡県沼津市の内浦湾には、淡島(あわしま)という島があります。ご記憶の方も多いと思いますが、一時期、内浦湾周辺の動きが妙にきな臭く、また、あまりにも不自然な、同地を題材にしたアニメ「ラブライブサンシャイン」が放映されたこともあり、しばらく動向を伺っていたことがあります。

画像5:今や懐かしい淡島とラブライブ

実は、このアニメ作品も多分に日本神話との接点があり、ある程度分析が出来ているのですが、それについてはまた別の機会にお伝えしたいと思います。

ここで取り上げたいのは淡島であり、この島の中央には淡島神社が鎮座するのですが、この神社の別名はなんと

 厳島神社

であり、御祭神はイチキシマ姫なのです。

画像6:淡島の淡島神社(厳島神社) G
画像引用元:Googleマップ

淡島神社は、「粟島」などと表記を変えながらも全国に見られる神社なのですが、一般的にその主祭神が

 少彦名(すくなひこな)

なのは、神社に詳しい方ならとっくにご存知のことでしょう。

そうなると、ここにスクナヒコナとイチキシマ姫に何らかの関係性が見られるのですが、これを調べる前に、スクナヒコナとはどのような神(あるいは人物)なのかを知らなくてはなりません。

どうやら、誓約(うけい)の分析から始まって宗像三女神、そして女神イチキシマ姫から更にスクナヒコナへと繋がってきました。

もしかしたらイチキシマ姫に付けられた「め」の記号を理解する鍵はスクナヒコナにあるのかもしれません。


なぜ生きておられる方を死者の中に捜すのか?(ルカ 24-5)
管理人 日月土

アニメに表れた宗像三女神

ここ最近のテーマでは、日本神話の誓約(うけい)で生まれた王と女王の系譜、そして誓約の当事者であるスサノオ(素戔嗚尊)とアマテラス(天照大神)、そして何故か誓約に登場しない三貴子の一人、ツクヨミ(月読尊)について果敢にも考察を試みました。

王と女王の系譜についてはまあまあ分析はできたのかなと思ったのですが、前回の記事「三貴子の暗号 – 三貴子の誕生」で述べた様に、結局のところ三貴子の出自についての分析はチンプンカンプンでそこから進んでいません。

今回はその難題についてはそのまま迂回して、誓約で登場する3人の女神、世にいう「宗像三女神」が最近放映されたアニメキャラクターのモデル使われているという話をします。

その前にまず、誓約について触れた次の記事を頭に入れておいてください。

 誓約関連記事:
 a)誓約(うけい)の暗号 – 王の系譜 
 b)誓約(うけい)の暗号 – 隠津島姫と3女神
 c)誓約(うけい)の暗号 – 五人と三人
 d)誓約(うけい)の暗号 – 剣と王権

■鹿乃子アニメと三女神

昨年の今頃、ストーリーも何もあったものではない、しかしながら日本の古代史に妙に精通していると思わせる学園コメディアニメ「しかのこのこのここしたんたん」を取り上げました。

画像1:アニメ「しかのこのこのここしたんたん」」
©おしおしお・講談社/日野南高校シカ部 (以下の画像も同様です)

 鹿乃子関連記事:
  1)越と鹿乃子
  2)鹿と方舟信仰
  3)鹿と大船と祓祝詞

これらの記事では、どうやら鹿乃子の「鹿」とは

 鹿 → シカ → 志賀神 → 方舟

と、どうやら聖書の創世記に記述され、さらに古くはシュメール神話にも登場する「方舟」を象徴しているようだとの結論を得ました。

このアニメの構造分析は一旦ここまでとしていましたが、今回誓約の分析を実施したことで、主役?の鹿乃子ちゃん以外のキャラクターモデル、その一部が判明したのでここでお知らせしたいと思います。

簡単に設定を説明すると、鹿の角を生やした少女、鹿乃子のこ(のこたん)が路上に突然現れ、日野南高校(仮称)に通う虎視虎子(こしたん)のクラスに転入することになります。二人はシカ部なる奇怪な部活動を始めますが、そこに虎子の妹の餡子(あんこ)、そして入部を希望した馬車女(ばしゃめ)めめが加わり、総勢4名の賑やかな部活動が始まります。

画像2:日野南高校シカ部のメンバー

前に同作品を分析した時に、のこたん以外のキャラにも絶対に何か含みがあると睨んでいましたが、その時は力及ばずそこまでは踏み込めませんでした。

さて、鹿部のメンバーは4人ですが、方舟という抽象的事実を擬人化したのこたんを除けば残るメンバーは3人です。3人の少女が何を意味するのか・・・ここで、日本神話の誓約に登場した宗像三女神との関連性が気になって来ます。

もちろんこれだけでは、性別と3という数字の一致が気になるという程度で決定的なことは言えないのですが、そのモヤモヤを突破するきっかけになったのが、画像2の右下に描かれた「虎視餡子」の存在です。

この「餡子」が誰をモデルにしているのか、それは日本書紀のスサノオについて書かれた一書、そして秀真伝のソサノオ伝から次の姫を表現しているだろうという結論に至りました。この考察の詳細についてはメルマガでお伝えしたいと思います。

さて、その姫の名は

 隠津島姫(おきつしまひめ)

であり、秀真伝では大国主の正皇后とされています。

もうお分かりの通り、オキツシマヒメとは宗像三女神の一人、タギツ姫の別名であり、ここから、のこたん以外の鹿部のメンバーは宗像三女神をモデルしているという予想がかなり確度の高いものとなるのです。

ここで、本ブログの解析で判明した同一人物を指す別名の一覧を再提示しておきます。

 宗像三女神の別名一覧:
  タギツヒメ:  オキツシマヒメ、タクハタチヂヒメ、トヨタマヒメ
  タゴリヒメ:  エツノシマヒメ、アメノウズメ、サルメキミ、タマヨリヒメ
  イチキシマヒメ:コノハナサクヤヒメ

さて、その人物モデルがタギツヒメだと判明した餡子ですが、このアニメでは虎子の妹という設定になっています。この関係を紐解くには、やはり同じ宗像三女神をキャラクターモデルに使用した、スタジオジブリのアニメ作品「紅の豚」、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」が参考になります。

 宗像三女神とジブリの少女キャラ
  タギツヒメ:  千尋(千千)、カヤ(もののけ)
  タゴリヒメ:  リン(千千)、モロ(もののけ)、ジーナ(紅豚)
  イチキシマヒメ:サン(もののけ)、フィオ(紅豚)

千と千尋の神隠しに出てくる千尋とリンの関係を見ると、リンは千尋に世話を焼く「姉の様な存在」として描かれているのが分かります。

画像3:千と千尋の神隠しから千尋(左)とリン
© 2001 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDDTM

ジブリ作品が意図的に日本古代史を模倣したものであるならば(私はそう確信していますが)、餡子の姉である虎子はタゴリヒメと見て間違いないでしょう。そうなると自動的に馬車目ちゃんはイチキシマヒメを指すと考えて良さそうです。

この結論を元に画像2を描きかえると次のようになります。

画像4:シカ部のメンバーは方舟と宗像三女神

■のこたんの意味は方舟だけか?

さて、画像4を見ると、宗像三女神は良いとして、どうして方舟がそこに出てくるのか今一つ釈然としません。どうやらのこたんに対してももう少し考察を加える必要があるようです。

ストーリーなどあってない無茶苦茶なアニメではありますが(観るの辛かったです)、話題のアイテムとして一貫して登場するのが、タイトルになった「鹿」と「鹿煎餅」です。

この二つのアイテムで誰もが想像するのが、奈良の春日大社、そして春日大社と言えば

 藤原氏

の氏神を祀る神社であることは多くの方がご存知だと思います。

さて、このアニメの設定では東京都の日野市が明示的にその舞台とされていますが、何故日野なのか?

東京都の都章は銀杏(いちょう)ですが、一般に藤紋を家紋とすると知られている藤原氏の嫡流の中には、銀杏を家紋としている藤原北家花山院流の庶流に当たる「飛鳥井家」、そして、日野と言えば藤原北家日野流嫡流の「日野家」が思い浮かびます。どちらも

 藤原北家

の流れであることは少し気になる点です。

画像5:飛鳥井銀杏(飛鳥井家)と鶴丸(日野家)

これを元に更に画像4を次の様に描き直してみました。

画像6:藤原北家と宗像三女神

これで、少し歴史的な共通性が見えてきました。藤原氏の氏神の一柱である武御雷(たけみかづち)は大国主に出雲の国譲りを迫った神と言われています。そして前述したように、大国主の妃であるオキツシマヒメとはタギツヒメのことなのです。

どうやら、宗像三女神もとい誓約についてさらに深く追うには、藤原北家の出自についても調べざるを得ないところまで判明しました。そして、それが方舟伝承とどう関係するのか、歴史の闇は本当に深いです。

■最近のアニメから

最後に、次のアニメ宣伝ポスターを見てください。

画像7:帝乃三姉妹は案外、チョロい。
©ひらかわあや/小学館/アニプレックス

今年の夏アニメとしてつい最近まで放映されていたものですが、「帝」や「三姉妹」とあまりにもあからさまなタイトルなので、これも修行だと思って全エピソードを見通しました(好きで観たのではありません、本当です)。

この4人の構図、上の画像2、4,6とそっくりですよね。私の分析ではやはり宗像三女神をモデルにしているのですが、誰が誰をモデルにしているのかお分かりになるでしょうか?そして、+1の存在は何を意味しているのか?

ヒントはキャラクター髪の毛の色とキャラ名なのですが、次から次へとアニメネタにされる宗像三女神とはいったい何なのか?そしてなぜ繰り返し用いられるのか?それについては別の記事で解説したいと思います。


管理人 日月土