前回、前々回と鹿児島と日本神話の関係について、現地調査の体験をを元に記してきました。
・日本神話と鹿児島
・日本神話と鹿児島(2) – 吾平山上陵 –
今回の記事は大きく視点を変えて、このブログでは恒例のアニメ作品による分析を試みてみたいと思います。
今回題材に取り上げるのは次の作品です。
およそ歴史ブログには相応しくないキュートな絵柄なのですが、実はこの作品、スタジオシブリの「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」などと並んで、日本古代史をベースにした数あるアニメの中でも、最高峰に位置する作品であると私は睨んでいるのです。
このアニメ作品「魔法少女まどか☆マギカ」は(真)ブログの次の記事で既にご紹介済みです。
関連記事:魔法少女は永遠に
上の記事では、2011年の東日本大震災、そして最近のコ〇ナ騒動に関連したこのアニメ作品の呪術性について解説していますが、作品の重要なモチーフとなった日本古代史については触れていませんでした。今回はそこに少し踏み込んでみようという訳なのです。
■鹿児島と鹿目
このブログにお付き合いの長い読者様でなくても、既に「鹿児島」と「鹿目」が「鹿」の一字で関連性を持つことに気付かれたと思います。「何だ、それだけじゃないか!」とは思わないでください。当然この続きがあるのです。
前回記事「日本神話と鹿児島(2)」で、吾平山上陵(あいらさんりょう)と諏訪神社の関連性を指摘しました。ちなみに、吾平山上陵の所在地は鹿児島県の鹿屋市(かのやし)となります。
ここで諏訪神社の大元、諏訪大社の祭神の名を挙げておきたいと思います。表記は古事記に拠るものです。
建御名方神(たけみなかたのかみ)
そして諏訪大社独自の奇祭とも言われるのが。
御頭祭(おんとうさい)
です。
この御頭祭がどのような祭であるかは、ネットでも様々な情報が書かれていますが、ここでは諏訪大社の公式ページから抜粋してみましょう。
御頭祭(上社例大祭)4月15日
本宮で例大祭の神事執行後神輿行列を仕立て前宮に赴き十間廊で古式に依る祭典が行われます。古くは三月酉の日に行われたため酉の祭りとも言われ、農作 物の豊穣を祈って御祭神のお使いが信濃国中を巡回するに際して行われたお祭りで大御立座神事とも言います。
特殊神饌として鹿の頭を始め鳥獣魚類等が供え られるため一部では狩猟に関係したお祭りの如く言われています。唯今は鹿肉とともに剥製の鹿頭をお供えしますが、昔は七十五頭献じられたこともあり、中に必ず耳の裂け た鹿があって高野の耳裂鹿と言い七不思議の一つに挙げられています。
引用元:諏訪大社公式ページ
既にお気付きの様に、諏訪大社と「鹿」の字の間には、どうやら切っても切れない関係がありそうなのです。ですから、鹿児島県内に諏訪神社が多いのと県名・市名の「鹿」の字の間には何か関係があると見るのは、それほど突飛な発想ではないと言えるでしょう。
■古事記に見る建御名方神
御頭祭がどうしてこのような形式を取るのか、その由来は定かではないようです。そこで、今度は祭神の建御名方神が古事記の中でどのように記述されているかを見てみます。
ここに天照大御神詔(の)りたまはく、「またいづれの神を遣はさば吉(よ)けむ」とのりたまひき。ここに思金神(おもひかね)また諸(もろもろ)の神白さく、「天の安河の河上の天の石屋に坐す、 名は伊都之尾羽張神(いつのをはばりのかみ)、これ遣はすべし。
もしまたこの神にあらずは、その神の子、建御雷之男神(たけみかづちのをのかみ)これ遣はすべし。またその天尾羽張神は、逆(さかさま)に天の安河の水を塞(せ)き上げて、道を塞き居る故に、他神(あたしかみ)は得行かじ。かれ、別に天迦久神(あめのかくのかみ)を遣はして問ふべし」とまをしき。かれここに天迦久神を使 はして、天尾羽張神に問ひたまひし時、答へて白さく
「恐(かしこ)し。仕へ奉らむ。然れどもこの道には、僕が子建御雷神を遣はすべし」とまをして、すなはち 貢進(たてまつ)りき。ここに天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を建御雷神に副へて遣はしたまひき。
「天尾羽張神」と「建御雷神」(タケミカヅチノカミ)が出雲平定に向かった下りなのですが、ここで二柱の神は出雲の王「大国主命」と対面し国譲りを迫りますが、大国主命は息子の一人である八重事代主に判断を任せて、その八重事代主は「国を譲る」と決断します。
他の子もこれに同意しているのかと改めて大国主命に問い質した所、一人だけ同意しない子がいるとのこと。次にその段を見てみましょう。
かれここにその大国主神に問ひたまはく、「今汝(いまし)の子事代主神、かく白しぬ。また白すべき子ありや」ととひたまひき。ここにまた白さく、「また我が子建御名方神あり。これを除きては無し」と、 かく白す間に、その建御名方神、千引の石を手末(たなすゑ)にかかげて来て、「誰そ我が国に来て、忍び忍びかく物言ふ。
然らば力競(ちからくらべ)せむ。かれ、我まづその御手を取らむ」と言ひき。かれ、その御手を取らしむれば、即ち立氷(たちひ)に取り成し、また剣刃(つるぎは)に取り成しつ。かれここに懼(おそ)りて退き居りき。
ここにその建御名方神の手を取らむと、乞ひ帰して取りたまへば、若葦を取るが如、掴み批(ひし)ぎて投げ離ちたまへば、即ち逃げ去にき。かれ追ひ往きて、科野国(しなののくに)の州羽(すは)の海に迫め到りて、殺さむとしたまふ時、建御名方神白さく、「恐(かしこ)し。我をな殺したまひそ。此地を除きては、他処に行かじ。また我が父大国主神の命に違はじ。八重事代主神の言に違はじ。この葦原中国は、天つ神の御子の命のまにまに献らむ」とまをしき
そうなのです、一人だけ同意しない子とは建御名方神のことで、ここで、天から派遣された建御雷神と勝敗を決するための力比べを始めるのです。この力比べ、相撲の起源とも言われているようです。
結果としては、建御名方神は建御雷神に負かされ、信濃の諏訪湖に逃げるのですが、追い詰められた建御名方神は、命乞いと同時に出雲の国譲りを認め、今後諏訪の土地から出ないと宣言するのです。
ここまでは良く知られた神話の中の国譲り伝承なのですが、さてここに登場するもう一人の神、建御雷神とはいったいどのような神様なのでしょう?
ご存知の方はとっくにご存知のように、
鹿島神宮の祭神
なのです。
またもや「鹿」の字が登場するのですが、この鹿島神宮で有名なのが、地震を鎮めると言われている要石(かなめいし)なのです。
ここで、魔法少女「鹿目(かなめ)」まどかの鹿目がどうやら鹿島神宮との関係を指すのではないかと予想されるのです。
これまでの関係性を整理すると次のようになります。
鹿児島>諏訪神社>諏訪大社>御頭祭>鹿
諏訪大社>建御名方神>建御雷神>鹿島神宮>要石>鹿目
⇩
鹿児島 >> 諏訪(御頭祭) >> 鹿島 >> 鹿目
これではまだまだアニメと関連が薄いように思われますが、この関係性を更に補強するのが、「まどか」という下の名前なのです。
■竈神社の祭神
「まどか」という文字列をアナグラムとして並べかえると、「竈(かまど)」となるのは良いでしょう。さて、この「竈」の名を冠している神社が九州には多く見られるのですが、その主祭神が誰なのかはご存知でしょうか?
竈神社の主祭神とは
玉依姫(たまよりひめ)
なのです。これが何を意味するかは、再び少女神仮説による次の系図を見ればお分かりになると思います。
玉依姫は吾平山上陵の被葬者と比定されているウガヤフキアヘズノミコトの皇后なのです。これにより、「まどか」というキーワードが鹿児島の吾平山上陵との関連性を示唆しているとも言えるのです。
以上をまとめると、アニメキャラ「鹿目まどか」とは
鹿島の玉依姫
を意味していると考えられるのですが、これが鹿児島及び諏訪・鹿島と具体的にどのように関連してくるのか、また、何故それがアニメによる呪いに使われたのか?それについては次回のメルマガの中で考察したいと思います。
磯前の大樹の下に鎮まるは はるかに旧き琥珀の思ひ
管理人 日月土