先月、ブログ記事「壁画が語る古代の大洪水事象」で、福岡県宮若市の竹原古墳石室に描かれた壁画について、その図案がおそらく古代期の大洪水と関連するものだと見た時、その多くが一貫性を持って説明できることを示しました。

この時に疑問として残ったのが、翳(さしば)とよばれる左右に描かれた大きな日除け、あるいはうちわのような物体だったのですが、それが何であるかをここではもう少し考察してみます。
■陶棺に刻まれた同じ図案
話を進めるにあたって、岡山県美作市平福で出土した陶棺(とうかん)についてまずご紹介します。陶棺とは文字通り、土の焼き物でできた棺(ひつぎ)で、死者を収めるために作られたものです。

この陶棺は現在東京国立博物館が所蔵しており、同博物館が運営している「文化遺産オンライン」からも閲覧することができます。
これについての詳細は、同サイト及び考古学関連サイトで見ておいていただきたいのですが、今回ここで私が注目するのは、同陶棺の側面に刻まれたレリーフの図案なのです。

画像1と画像3を見比べた時、配置や構成物は多少異なるものの、基本的に同一テーマを扱ったものなのではないかと直感させます。
詳しく見て行くために、図案の各パーツに番号を振った次の図を作成しました。

(3)と(5)はそれぞれ同型のペアを持つ
これを、竹原古墳の壁画と対比させながら見て行きましょう
①は陶棺の蓋の部分に刻まれていますが、円形が二つ並べて配置されています。同じ文様は竹原古墳壁画には描かれていません。
歴史言語学の研究家、川崎真治氏によると、これはオリエント「洪水伝承」に登場する太陽神「ウトゥ」、エジプト語の太陽神「ラー」を表わす「双日(そうじつ)」紋であろうとしています。
②は竹原古墳にも描かれている「連続三角紋」に対応していると考えられます。この波線を縦に3つ並べたものがエジプト象形文字が示す「水(me)」であり、この波線は象形文字を一つの線に省略したものであると考えられるのです。

(3)の馬については、竹原古墳壁画の考察の時にも述べましたが、シュメール語の「ma(舟)」を漢字の音である「馬(ma)」と表現し直したものとすると辻褄が合ってきます。要するに、竹原古墳壁画と同様に、この2頭の馬は舟または方舟を表わす記号として描かれた可能性があるのです。
(4)の人物については、竹原古墳壁画に描かれた人物像と多少輪郭が異なりますが、この図案が大洪水事象をテーマに描かれたものなら、必然的に同一人物を指していると考えられます。それがいったい誰を指すのかについてはもう少し分析を要します。
(5)はまさに竹原古墳壁画で描かれた翳(さしば)とされる物体と同じものを指していると考えられるのですが、壁画と比べると随分と簡略化されているようにも見えます。
これでは翳の意味は結局分からず仕舞いとなってしまいそうですが、この2つのペアの丸みを帯びた先端部のデザインから、これは蓋部に刻まれた「双日」を模したものではないかと考えられるのです。
蓋にはレリーフを刻む十分なスペースが取れないことから、洪水伝承の中でも特に重要な象徴を印すはずです。それに対応するものを棺のレリーフから選ぶとすれば、翳の先端部が最も適当なのではないかと思うのです。
竹原古墳壁画の場合は翳の先端部をより真円に近い丸い形に描いており、他に円形の物体を他に描いた形跡もありません。よって、この二つの図案の対比から
翳(さしば)状の物体は双日を表わす
と解釈できるのです。
と、ここまでは良いのですが、それでは
・どうして「双日=二つの太陽」なのか?
・どうして太陽に脚がついているのか?
・竹原古墳壁画の双日に描かれた7本の枝は何を意味しているのか?
が相変わらず未解決のままなのです。

「双日」との共通性が見られる。どこに?
■エポナの彫像と陶棺レリーフ
平福の陶棺について調べていると、非常に興味深い視点でこれについて語っているブログを見つけました。そこでは、ケルト文化渡来の可能性と陶棺デザインの関係性について触れています。

ヒデチャコさんのブログから
そのブロガーさんが指摘するように、画像6の見た目の図案は平福陶棺のレリーフとそっくりです。
同ブログによると、これは古代ケルト文化における「水と馬の女神エポナ」の彫像であり、後にローマ、ユーラシアに広がっていったのだとか。
当然ながら、古代期に日本にもその文化が渡来してきたのではないかと考えるのは、自然なことかもしれません。
しかし、このデザインの根本思想が
世界的な大洪水事象
にあると捉えた時、そこにはもはや国境も何もなく、世界同時にその時の混乱と回復の記憶が刻み込まれたはずです。
実際に前述の川崎真治氏は、シュメール語の水や洪水に関する言葉が、音変化によりヨーロッパの諸言語に変換されて行く過程を一部示しています。もちろんそれは、ヨーロッパだけでなくアジア地域も同じであり、当然そこに日本も含まれているのです。
管理人 日月土























