前回はちょっとばかりアニメネタに触れましたが、ここでまた卑弥呼の時代に注意を向けたいと思います。
過去記事「公孫氏卑弥呼とは誰か」では、年表を比較する限り、魏志倭人伝の卑弥呼と記紀に登場する神功皇后(じんぐうこうごう)は同一人物とは言い切れないまでも、どうやら同時代の人物らしいというお話をしました。
また、この二人の記述の共通点として、魏志倭人伝では「倭国大乱」、記紀では「三韓征伐」と国同士の大きな争いがあったのも注目点であると述べました。
今回は、ここから少し踏み込んで、私なりの解釈を加えてみたいと思います。あくまでも自己流解釈なので、そんな根拠のない話は結構という方は、ここで読むのを止めてもらって構いません。
■神功皇后とは
ここ2年の間、「少女神」という女系が天皇の王権を保証しているという概念を用い、記紀や秀真伝(ほつまつたえ)の解読を試みていますが、何度もお伝えしているように、これは
史書は暗号の書である
という前提で成り立っています。書かれたものが真実だと思いたい方には少々耐え難い仮定ではありますが、史書に残された内容の荒唐無稽さを考えれば、むしろ編者がそのような読み方を求めているのだと私は解釈しています。
今回は史書に登場する「神功皇后」について、その暗号解読的解釈を試みてみたいと思いますが、まず基本的な情報として、この神功皇后の日本書紀における名前は気長足姫(おきながたらしひめ)であり、第14代仲哀天皇の皇后であると記されています。
神代以降の日本書紀は、基本的に歴代天皇史の体裁を取っていますが、何故かこの神功皇后については、皇后でありながらも独立した一巻を占めており、まるで歴代天皇の一人の様に扱われているのです。ここからも、神功皇后は日本書紀の中でもかなり異質な存在であることが窺えるのです。
そして、神功皇后記には、現代の目から見れば不思議な記述が多く、詳しくは、日本書紀または古事記をご覧になって頂きたいのですが、それを箇条書にするなら凡そ次の様になります。
実績
・王の仲哀天皇が崩御された年に、王に代わり
九州熊襲征伐を達成する
新羅を攻め、これに加え百済、高麗を服従させる(三韓征伐)
・仲哀天皇の嫡男、忍熊皇子(おしくまのみこ)と争う
・朝廷への貢物を巡り新羅を再征伐
伝承その他
・船の上で食事をしていると鯛が集まってきた(浮鯛)
・新羅遠征の誓約(うけい)で釣りを試みた(松浦の釣り)
・自ら神主となり神と対話する
・三韓征伐時に子を宿していたが石を抱いて出産を遅らす(鎮懐石)
この他にも、福岡など九州北部に行けば、各地に神功皇后伝承や遺構が残されていますが、私が現地で見てきた中では
・水路の遺構と言われる那珂川市の「裂田の溝」(さくたのうなで)
・鎮懐石の実物が置かれていると言う糸島市の「鎮懐石八幡宮」
・半煮え料理の風習が残る春日市の「小倉住吉神社」
などが強い印象として記憶に残っています。
このように、あちこちにその痕跡が言い伝えられている神功皇后ですが、肝心の王である仲哀天皇は、神託を疑ったばかりに早く罷(まか)られたと考えられており、神功皇后はその王の代役として、神の託宣に従い勇猛とも言える様々な実績を残し、最終的には自ら産んだ皇子(第15代応神天皇)を天皇に立てたとあります。
皇后である女性が男性顔負けの活躍をしたという記述自体に何やら違和感を覚えますし(あくまでも当時の価値観として言ってます)、託宣の時に神の名を執拗に求める記述、また鎮懐石伝承にも現実感の薄さを覚えるのです。
私としては、この掴みどころの無さこそが、史書に刻まれた暗号メッセージであろうと考えるのですが、それにしても色々あり過ぎて、これをどのように再構築すれば実際の史実に近く組み立て直せるのかと長らく思案の時が続いていたのです。
■神功皇后の少女神解釈
さて、神功皇后はその名の通り「皇后」ですから、そこにこれまでと同様の解釈を加えると
神功皇后は少女神である
となり、それまでの歴代天皇と同様、仲哀天皇も王権を得るために神功皇后の元へ婿入りしたと考えなければなりません。
以前からお伝えしているように、現代にまで残されている史書類の数々は、元々女系が引き継いでいた王権継承の権利を、史書編纂期に男系による継承に書き換えられた(改竄された)と私は考えており、すなわち、実際は男女の立ち位置が逆転していたのだろうとしているのです。
この「事実を正反対に記述する」という改竄手法を逆手に取れば、神功皇后を巡る実際の史実は次のようであったのではないかとも考えられるのです。
これを見ると、神功皇后は熊襲・三韓に敗れたようにも見えますが、実際には神功皇后は兵を率いて遠征などには出ておらず、三韓勢力の助力を得た熊襲・三韓連合に仲哀天皇が討たれたことにより、自動的に王権が入れ替わったのではないかとも考えられます。
というのも、少女神は外からの婿を受け入れる立場であり、好んで争いの場に出るようなポジションだったとは考えにくいこと、また、婿家系の男性は少女神の血統を強く欲する立場であり、ライバル亡き後、少女神は極めて大事に扱われただろうと予想できるからです。
そんなことを書くと「日本は半島の国々に負けたのか!」と思われるかもしれませんが、ここで最近の記事「卑弥呼と邪馬台国の精密分析」に提示した「倭国」の新解釈を思い出して頂きたいのです。三韓が朝鮮半島の国々であるということは、すなわち
三韓も倭国(連合)の一員であった
ということであり、この状態は内乱、もしくは
倭国大乱
と呼ぶに相応しいとも言えるのです。
すると、神功皇后が石を抱いてまで出産を遅らせて産んだとされる第15代応神天皇とは、この戦いの勝利者である熊襲・三韓系の王家の中から選出された別家系の王であると言えるようになります。
私は、熊襲・新羅とは倭国全土に広がっていた「出雲族」系の民族が建てた国であり、第10代崇神天皇の時に入れ替わった別家系の男性王が、再び神武天皇などと同じ出雲系に返り咲いたということなのではないかと見ているのです。
以上、極めて粗っぽい論理の組み立てなのですが、この説を裏付けるには、神功皇后の他の実績や伝承の類を細かく見て、そこに埋め込まれているコード(暗号)の意味を解読して行かなければなりません。
そして何より、この解釈が公孫氏卑弥呼とどのように関連するのか、その途方もない考察はまさに緒に就いたばかりなのです。
以下は「少女神 ヤタガラスの娘」の著者、みシまる湟耳(こうみみ)氏のツイートです。
私の確認では電子版はAmazonで現在購入できるようですが、どうしてこのようなことになったのか、本人にも正式な回答が来ていないようです。ナニコレ? 今日急に Amazon から購入できひんくなった
— ヤタガラスの娘@みシまる湟耳 (@340mimizax) October 11, 2023
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白き衣夢に現る姫様の悲しきお顔に頷くのみかは
管理人 日月土