これまで、5回ほど三嶋神についてブログ記事を掲載してきました。
(23.02.28) 名前を消された三嶋
(23.03.15) 甲と山の八咫烏
(23.03.28) 加茂と三嶋と玉の姫
(23.04.15) 書き換えられた上代の系譜
(23.04.29) 伊古奈姫と豊玉姫、そして123便
記載内容がかなりごちゃごちゃしてきたのと、私自身が少し混乱してきたので、ここで一旦、これまで掲載した内容を整理しまとめたいと思います。
■史書の記述をどう読むか
毎回同じことを言わせてもらってますが、私の史書の記述に対する考え方は以下の通りです。
(1)史書は基本的に暗号文として解釈する
(2)暗号化された究極の形式が「神話」である
(3)日本の史書は西暦700年代の編纂期に統一編集(改竄)されている
例えば、自分の記録を残す時、知られたくない事実は通常は完全に伏せるものです。しかし、その中に次世代に継がせるべき大事な情報があった場合、特定の読み人だけに分るよう、ある程度の法則性を以って事実を書き換えることはあり得ます。私は、史書はそのような意図により編纂されたのだろうと想定しており、複数の史書類を比較検討して、まず解読のキーワードは何であるのかを検討します。
このような情報の書き換えを続けていると、様々な点で論理的矛盾や事実関係の齟齬が生まれるのは容易に想像できることであり、その問題をいっぺんに解決する手法が「神話」、すなわち歴史をファンタジー化してしまうことです。おそらく日本神話は、「天皇家の出自」という、日本の国体を象徴する一家族のルーツを、「神の子孫」という超自然的存在と結び付けて曖昧にしているのだろうと考えられるのです。
読者の皆様の中で、「天皇家が神の子孫」だと本気で信じておられる方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?私は別に、日本の国家運営に一定の役割を果たしてきた長い歴史のある一族を貶すつもりは全くないのですが、事実は事実として開示してこそ、その歴史的伝統は担保されるものだと思っています。
そのような史実を丸めて隠す「神の子孫」思想こそが、先の世界大戦で軍事プロパガンダとして利用されたとは言えないでしょうか?
西暦700年代には、古事記、日本書紀が編纂されますが、この編纂過程においては、各家に保管されていた家史が強制的に回収され、これに従わない者は死罪にされたと言います。また同時に、中国大陸の文物が大量に買い占められたという記録もあるようです。つまり、この時期に
日本の歴史は改竄を受けた
と言って良いのかもしれません。この時の状況を歴史研究家の間では「書紀合わせ」、すなわち日本書紀に見られる古代史の統一見解に沿って、他の史書についても編纂(改竄)が行われたと見ているのです。
■アニメ作品に見る歴史の開示
前節で述べたように、一般に流布している史書の記述が暗号化され改変されているものなら、当然、その事実を知り、これをデコード(暗号解読)している個人や団体がどこかに存在すると考えなければなりません。もしかしたら、正しく史実が記載されている全く別の史書(正史)が残存しているのかもしれません。
このブログの長い読者様なら既にご存知の様に、私は歴史解説ネタに時々アニメ作品を取り上げます。それが何故かと問われるならば、アニメ作品の基本プロットの中に日本古代史が折り込まれていると確認できることがかなりの頻度であるからなのです。
このブログでは、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」を皮切りに、スタジオジブリ作品である「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」を古代史を語るテキストとして使って来ました。
これらの作品は、どうしてなのか、手元に用意した史書類よりも詳細に当時の人間関係などを表現しているケースが見られるのです。おそらく、これらの作品の考証を担当したスタッフの中に、改竄された記紀などではなく、正史に記述された内容をよくご存じの方がいるのだろうというのが私の予想です。
どうして、隠蔽された史実を劇作品の中にわざわざ取り入れるのかは重要な問題でありますが、それについての考察はここでは控えます。私は、史書類のデコードだけではなく、これらの作品に密かに埋め込まれた古代史実の分析結果をも資料として利用していることは予めご了承ください。
■「少女神」という概念
「少女神」という言葉の意味は、その概念を最初に取り上げた過去記事「少女神の系譜と日本の王」を読んで頂きたいのですが、正直に言って、「みシまる 湟耳」さん著の書籍「少女神 ヤタガラスの娘」からの借用です。
ものすごく簡単に説明するなら、古代天皇家は、特殊な能力を持つ少女(少女神)の元へ婿入りできた男性が王権を得ていたのではないか、そして、その少女を輩出する家系こそが、三嶋であり八咫烏(ヤタガラス)なのではないかと論説しています。
もうお分かりのように、三嶋神に関するこれまでの分析も、この「少女神」の概念を切り口に行ってきたのです。
日本神話に登場する神々の名前が、実はある歴史上の特定人物を幾つかの変名に置き換え(一体分身)たものであることは、私でなくても多くの歴史研究家が既に気付いていることだとは思いますが、その場合、個々の史実についてはそれで説明ができても、血脈を辿るとどうも上手く行かない、むしろ混乱の度合いが深まるケースが多かったのではないかと思います。
しかし、これらをこれまで一般的であった男系による王権継承から、女系による王権継承(少女神の血統)に置き換えると、全体の見通しがたいへんシンプルになることに気付くのです。
■女系による三嶋神の系譜
さて、能書きが長くなってしまいましたが、これまでの三嶋神に関する考察を、少女神による女系継承に置き換えるとどうなるかを、一つの系図として作成してみました。
この図は、女系の血筋を中心に、それぞれの代の女王に男性王が婿入りするという体裁で描かれています。
男性王の出身家は記紀で后(きさき)が出た家とされているものと置き換えています。おそらく史書編纂者が採用しただろう改竄手段の逆を行っていると考えてください。
木花開耶姫(大山祇の娘) → 瓊瓊杵尊(大山祇の息子)
媛蹈鞴五十鈴媛(大物主の娘) → 神武天皇(大物主の息子)
彦火火出見尊の場合は、その変名である三嶋湟咋と並列に置かれることの多い大山祇の家系と仮定します。また、鸕鷀草葺不合尊の場合は、変名に大物主とあるので、大物主の家系としました。
さて、この図を見てどう思われるでしょうか?少なくとも、
上代天皇は血が繋がっていない
ことがお分かりでしょう。要するに、男性王の出身家は女王に対して外戚となる関係なのです。しかも、この4代に亘る短い系図の中に、既に2つの外戚家系が入り込んでいるのです。
もちろん、この図は少女神仮説を元に作成しているのですが、この系図を用いることで以下の議論がずい分と説明し易くなったことにお気付きになったでしょうか?
・天皇(男性)の出自に関する諸議論
・魏志倭人伝に記述された女王国
よく、「〇〇天皇は△△出身だった!」とセンセーショナルな歴史議論がなされることがありますが、そもそも、男に王の継承権がないのであれば、どこの出身地かはそれほど大きな問題とはならないのです。
また、魏志倭人伝が記述する「女王国」という古代王国の捉え方は全く異質であるどころか、むしろその通りだというこになるのです。
さて、これが正しいとするならば、次に大きな問題が控えています。
・大山祇とは何者なのか?
・大山祇と三嶋、そして八咫烏との関係は?
・天皇家はいつから男系継承となったのか?
果たして、女系継承が突然男性継承に変わることがあるのだろうか?あるいは巧妙に男系継承に置き換えているだけなのか?ならば、天皇を名乗る外戚家はいったいどこからやって来た何者なのか?
実は、現在の皇室に直結する極めて重要な問題を孕んでいるのです。
管理人 日月土
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