もののけ姫と馬鹿

今回のタイトルですが、ちょっと誤解されそうなので初めにお断りを入れて起きます。

ここで使った「馬鹿」はいわゆる侮蔑的な意味での「ばか」ではなく、是非とも動物の馬と鹿を表す「うましか」と読んで頂きたいのです。

どうしてそのような区別をするのかについては、この後の記事を読んで頂ければご納得頂けるのではないかと思います。

■もののけ姫の少女神解釈

今から3年前、2021年の今頃からアニメ映画「もののけ姫」について、その物語構成のモデルとなった日本神話の分析を行ってきました。

これまでにどのようなことが分かったのか、それについては当ブログの過去記事を参考にして頂きたいのですが、今回は、これまでの分析で触れていなかった箇所、及び昨年展開した「少女神仮説」に基づいてに再度この作品を考察したいと思います。

これまでのおさらいとして、主要登場人物に対応する各々の神話上の神(人物)の関係は以下の様になります。

 カヤ   = タクハタチヂヒメ
 アシタカ = ニニギノミコト
 サン   = コノハナサクヤヒメ

これを図で表すと以下の様になります。

画像1:映画「もののけ姫」の主要登場人物の関係図

もののけ姫分析を始めた頃には気付かなかったのですが、カヤとアシタカ、そしてサンとアシタカの男女関係、いわゆる三角関係については、少女神仮説を取り入れると非常に上手く説明できることが分かります。

神話の中で、皇后タクハタチヂヒメにはオシホミミという王がいたのですが、記紀・秀真伝の記述によると、ニニギノミコトはその二人の間の子ということになっています。

この映画もそうなのですが、ニニギノミコトとその母であるタクハタチヂヒメとの男女関係を示すサインが幾つか見られる事から、私は「二人は不義の関係」と解釈してきましたが、ここに少女神仮説、古代王権は女系によって継承されていたという考えを導入すれば、ニニギノミコトは入婿でありタクハタチヂヒメと直接の血の関係はなかったことになります。

前王の王妃を娶って王権が移譲されるものなのかどうかは何とも言えませんが、少なくとも「不義の関係」は言い過ぎではなかったかと訂正します。

史書においてはニニギノミコトはオオヤマツミの娘であるコノハナサクヤヒメを娶ることになっていますが、少女神仮説を以ってこの記述を変換すれば

 オオヤマツミの息子ニニギノミコトがコノハナサクヤヒメに婿入り

と置き換え可能なのです。

この新解釈を適用した場合、もののけ姫の問題シーンであり、この映画を観た世の女性たちを怒らせた

 カヤからもらった贈り物(黒曜石の短剣)をサンに渡した

という、まるで下衆男の振舞いとも取られかねないアシタカの行動にも重要な意味が隠されていたことに気付かされるのです。それは、

 王権の継承

であり、第9代アマカミ(古代天皇)のオシホミミが王権を獲得できたのは、その皇后であるタクハタチヂヒメに王権継承権があるからであり、その権威の象徴である短剣を別の女性に渡す行為はその女性の夫に王権を継がせる行為そのものなのです。

もしかしたら、カヤは新しい女性の元でアシタカに王になってもらいたかったのかもしれないのです。

すると、サンのモデルとなったコノハナサクヤヒメは誰の子だったのかが問題になるのですが、そちらについてもこれまでの分析から次の答を既に得ています。それは

 ホノアカリとアメノウズメの娘

であり、ホノアカリとは、神話の中で多くの変名・蔑称を持たされた王で、代表的なのがアヂスキタヒコネ、あるいは

 サルタヒコ

なのです。

アメノウズメ(別名サルメキミ)も当然王権継承権を持つ女性であり、その実の娘であるコノハナサクヤヒメがそれを有するのは言うまでもありません。

秀真伝には、ニニギノミコトとホノアカリの二王朝並立時代があったとされ、そうなるとニニギノミコトはもう一つの並立王朝の娘を娶ったことになります。

ホノアカリ王朝については秀真伝に若干の記述があるものの、記紀からは完全に消し去られており、獣の名を冠した「猿タヒコ」の名を以って道案内の神などとその地位を大きく蔑まれているのです。

■アシタカを導いた馬鹿(うましか)

以上はこれまでの解釈をまとめたものですが、ここで新たに注目すべきキャラクターを取り上げます。それは、このキャラです。

画像2:ヤックル

映画の中で、短剣を渡されたアシタカは不思議な生き物に乗って蝦夷の里から西へと向います。

鹿の様に立派な角を携え、サラブレッドのような身体を以って長距離を走り抜く不思議な生き物。このヤックルは、設定上は架空の生き物とされていますが、そのデザインから窺われるのは、明らかに

 馬と鹿の合いの子

なのです。

果たしてこれは宮崎駿監督の単なる思い付きと捉えてよいのでしょうか?ここまで作品設定内に日本古代史を取り込み、モロや乙事主など、動物デザインにもその深い意味を忍ばせているのに、果たしてヤックルだけが「何となく」描かれたなどと言えるのでしょうか?

実は、この話は亡くなられた次の俳優さんにも繋がるのです。

画像3:三浦春馬さん

この「三浦春馬」という芸名が、馬鹿(うましか)を意味するのは前回記事「令和五年のブログ記事まとめ」の最後部に「三浦春馬と春日の関係」という見出しで小さく触れています。

春日大社は放し飼いの鹿で有名ですが、そこに祀られているのは藤原氏の祖神(おやがみ)である武御雷(たけみかづち)の神、別名鹿島神(かしまかみ)なのです。

藤原氏と言えば、今年放映されるNHKの大河ドラマ「光る君へ」は平安の藤原氏の時代に生きる紫式部の生涯をドラマ化したものですが、第1回放送の中に非常に気になるシーンがありました。お菓子を失くしてしまった三郎に向ってまひろが放った言葉です。

画像4:1月7日放送のダイジェスト動画から(吹き出しは筆者が加工)
https://www.youtube.com/watch?v=F-0rxW7VU-8

「馬鹿」(ばか)?果たしてこれは単純に相手を侮蔑する子供のやりとりを現代語表現しただけのものなのでしょうか?

そもそも「馬鹿」(ばか)の語源とは何なのでしょうか?

これについては、国語辞典編集者の神永さんによるブログ記事「何でバカって言うの?」が参考になります。

同記事における結論は、「諸説あるものの語源がはっきりしない」ということなので、現代日本人はその意味も分からずに「馬」と「鹿」を使って人を侮蔑しているということになります。

現代の子供でさえふざけて使う、こんな一般的な言葉の語源が不明だと言うのも驚きなのですが、もしも「馬鹿」が何かの呪術的符号だとするならば、そこには必ず呪術を成立させる明確な論理が存在するはずなのです。

実は、その答は少し見えています。以下の図を見れば、お分かりになる人は直ぐにハッと気付かれるでしょう。

画像5:古代ユダヤの紋章
イッサカル族(左)とナフタリ族(右)

どうやらニニギノミコトの王権取得にはこの紋章を戴く2族が関わっているようなのです。

そして、藤原氏と鹿の一族との関係はもちろんですが、馬を戴く一族とは具体的に誰なのか、そして、アシタカをサンの下へ送り届けた馬鹿(ヤックル)の映画表現は何を意味するのか?

また、ニニギノミコトノの事跡である「天孫降臨」と呼ばれる神話的事象も、この2族との関係を無視して正確に語り得ないのです。

ジブリ映画の大ヒット作「もののけ姫」にはまだまだ古代日本の史実が隠されていたようです。

岩戸しめの始めはナギ(伊邪那岐命)
ナミ(伊邪那美命)の命の時であるぞ、
ナミの神が火の神を生んで黄泉国に入
られたのが、そもそもであるぞ、
十の卵を八つ生んで二つ残して行かれた
のであるぞ、十二の卵を十生んだことに
もなるのであるぞ、五つの卵を四つ生ん
だとも言へるのであるぞ、総て神界のこ
と、霊界のことは、現界から見れば妙な
ことであるなれど、それでちゃんと道に
はまってゐるのであるぞ。

(日月神示 碧玉の巻 第十帖)


管理人 日月土

鹿児島と鹿の暗号

前回、前々回と鹿児島と日本神話の関係について、現地調査の体験をを元に記してきました。

 ・日本神話と鹿児島 
 ・日本神話と鹿児島(2) – 吾平山上陵 – 

今回の記事は大きく視点を変えて、このブログでは恒例のアニメ作品による分析を試みてみたいと思います。

今回題材に取り上げるのは次の作品です。

画像1:「魔法少女まどか☆マギカ」から鹿目(かなめ)まどか

およそ歴史ブログには相応しくないキュートな絵柄なのですが、実はこの作品、スタジオシブリの「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」などと並んで、日本古代史をベースにした数あるアニメの中でも、最高峰に位置する作品であると私は睨んでいるのです。

このアニメ作品「魔法少女まどか☆マギカ」は(真)ブログの次の記事で既にご紹介済みです。

 関連記事:魔法少女は永遠に 

上の記事では、2011年の東日本大震災、そして最近のコ〇ナ騒動に関連したこのアニメ作品の呪術性について解説していますが、作品の重要なモチーフとなった日本古代史については触れていませんでした。今回はそこに少し踏み込んでみようという訳なのです。

■鹿児島と鹿目

このブログにお付き合いの長い読者様でなくても、既に「鹿児島」と「鹿目」が「鹿」の一字で関連性を持つことに気付かれたと思います。「何だ、それだけじゃないか!」とは思わないでください。当然この続きがあるのです。

前回記事「日本神話と鹿児島(2)」で、吾平山上陵(あいらさんりょう)と諏訪神社の関連性を指摘しました。ちなみに、吾平山上陵の所在地は鹿児島県の鹿屋市(かのやし)となります。

ここで諏訪神社の大元、諏訪大社の祭神の名を挙げておきたいと思います。表記は古事記に拠るものです。

 建御名方神(たけみなかたのかみ)

そして諏訪大社独自の奇祭とも言われるのが。

 御頭祭(おんとうさい)

です。

この御頭祭がどのような祭であるかは、ネットでも様々な情報が書かれていますが、ここでは諏訪大社の公式ページから抜粋してみましょう。

御頭祭(上社例大祭)4月15日

本宮で例大祭の神事執行後神輿行列を仕立て前宮に赴き十間廊で古式に依る祭典が行われます。古くは三月酉の日に行われたため酉の祭りとも言われ、農作 物の豊穣を祈って御祭神のお使いが信濃国中を巡回するに際して行われたお祭りで大御立座神事とも言います。

特殊神饌として鹿の頭を始め鳥獣魚類等が供え られるため一部では狩猟に関係したお祭りの如く言われています。唯今は鹿肉とともに剥製の鹿頭をお供えしますが、昔は七十五頭献じられたこともあり、中に必ず耳の裂け た鹿があって高野の耳裂鹿と言い七不思議の一つに挙げられています。

引用元:諏訪大社公式ページ
画像2:御頭祭の様子(画像引用元:おみやさんcom

既にお気付きの様に、諏訪大社と「鹿」の字の間には、どうやら切っても切れない関係がありそうなのです。ですから、鹿児島県内に諏訪神社が多いのと県名・市名の「鹿」の字の間には何か関係があると見るのは、それほど突飛な発想ではないと言えるでしょう。

■古事記に見る建御名方神

御頭祭がどうしてこのような形式を取るのか、その由来は定かではないようです。そこで、今度は祭神の建御名方神が古事記の中でどのように記述されているかを見てみます。

ここに天照大御神詔(の)りたまはく、「またいづれの神を遣はさば吉(よ)けむ」とのりたまひき。ここに思金神(おもひかね)また諸(もろもろ)の神白さく、「天の安河の河上の天の石屋に坐す、 名は伊都之尾羽張神(いつのをはばりのかみ)、これ遣はすべし。

もしまたこの神にあらずは、その神の子、建御雷之男神(たけみかづちのをのかみ)これ遣はすべし。またその天尾羽張神は、逆(さかさま)に天の安河の水を塞(せ)き上げて、道を塞き居る故に、他神(あたしかみ)は得行かじ。かれ、別に天迦久神(あめのかくのかみ)を遣はして問ふべし」とまをしき。かれここに天迦久神を使 はして、天尾羽張神に問ひたまひし時、答へて白さく

「恐(かしこ)し。仕へ奉らむ。然れどもこの道には、僕が子建御雷神を遣はすべし」とまをして、すなはち 貢進(たてまつ)りき。ここに天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を建御雷神に副へて遣はしたまひき。

「天尾羽張神」と「建御雷神」(タケミカヅチノカミ)が出雲平定に向かった下りなのですが、ここで二柱の神は出雲の王「大国主命」と対面し国譲りを迫りますが、大国主命は息子の一人である八重事代主に判断を任せて、その八重事代主は「国を譲る」と決断します。

他の子もこれに同意しているのかと改めて大国主命に問い質した所、一人だけ同意しない子がいるとのこと。次にその段を見てみましょう。

かれここにその大国主神に問ひたまはく、「今汝(いまし)の子事代主神、かく白しぬ。また白すべき子ありや」ととひたまひき。ここにまた白さく、「また我が子建御名方神あり。これを除きては無し」と、 かく白す間に、その建御名方神、千引の石を手末(たなすゑ)にかかげて来て、「誰そ我が国に来て、忍び忍びかく物言ふ。

然らば力競(ちからくらべ)せむ。かれ、我まづその御手を取らむ」と言ひき。かれ、その御手を取らしむれば、即ち立氷(たちひ)に取り成し、また剣刃(つるぎは)に取り成しつ。かれここに懼(おそ)りて退き居りき。

ここにその建御名方神の手を取らむと、乞ひ帰して取りたまへば、若葦を取るが如、掴み批(ひし)ぎて投げ離ちたまへば、即ち逃げ去にき。かれ追ひ往きて、科野国(しなののくに)の州羽(すは)の海に迫め到りて、殺さむとしたまふ時、建御名方神白さく、「恐(かしこ)し。我をな殺したまひそ。此地を除きては、他処に行かじ。また我が父大国主神の命に違はじ。八重事代主神の言に違はじ。この葦原中国は、天つ神の御子の命のまにまに献らむ」とまをしき

そうなのです、一人だけ同意しない子とは建御名方神のことで、ここで、天から派遣された建御雷神と勝敗を決するための力比べを始めるのです。この力比べ、相撲の起源とも言われているようです。

結果としては、建御名方神は建御雷神に負かされ、信濃の諏訪湖に逃げるのですが、追い詰められた建御名方神は、命乞いと同時に出雲の国譲りを認め、今後諏訪の土地から出ないと宣言するのです。

ここまでは良く知られた神話の中の国譲り伝承なのですが、さてここに登場するもう一人の神、建御雷神とはいったいどのような神様なのでしょう?

ご存知の方はとっくにご存知のように、

 鹿島神宮の祭神

なのです。

画像3:鹿島神宮(画像引用元:Wikipedia

またもや「鹿」の字が登場するのですが、この鹿島神宮で有名なのが、地震を鎮めると言われている要石(かなめいし)なのです。

画像4:要石(画像引用元:Wikipedia

ここで、魔法少女「鹿目(かなめ)」まどかの鹿目がどうやら鹿島神宮との関係を指すのではないかと予想されるのです。

これまでの関係性を整理すると次のようになります。

 鹿児島>諏訪神社>諏訪大社>御頭祭>鹿

 諏訪大社>建御名方神>建御雷神>鹿島神宮>要石>鹿目

            ⇩

 鹿児島 >> 諏訪(御頭祭) >> 鹿島 >> 鹿目

これではまだまだアニメと関連が薄いように思われますが、この関係性を更に補強するのが、「まどか」という下の名前なのです。

■竈神社の祭神

「まどか」という文字列をアナグラムとして並べかえると、「竈(かまど)」となるのは良いでしょう。さて、この「竈」の名を冠している神社が九州には多く見られるのですが、その主祭神が誰なのかはご存知でしょうか?

画像5:福岡県太宰府市の竈神社(画像引用元:Wikipedia

竈神社の主祭神とは

 玉依姫(たまよりひめ)

なのです。これが何を意味するかは、再び少女神仮説による次の系図を見ればお分かりになると思います。

画像6:少女神仮説による系図

玉依姫は吾平山上陵の被葬者と比定されているウガヤフキアヘズノミコトの皇后なのです。これにより、「まどか」というキーワードが鹿児島の吾平山上陵との関連性を示唆しているとも言えるのです。

以上をまとめると、アニメキャラ「鹿目まどか」とは

 鹿島の玉依姫

を意味していると考えられるのですが、これが鹿児島及び諏訪・鹿島と具体的にどのように関連してくるのか、また、何故それがアニメによる呪いに使われたのか?それについては次回のメルマガの中で考察したいと思います。


磯前の大樹の下に鎮まるは はるかに旧き琥珀の思ひ
管理人 日月土

花嫁たちの故郷

今回はいきなりアニメの話題から始めたいと思いますが、毎度お断りしているように、ここはアニメブログではなく、歴史考察ブログであることをくれぐれもお忘れなきようお願いいたします。

先日、(真)ブログ「GOTO分の世界」で人気アニメ「五等分の花嫁」を話題とした記事を掲載しました。

画像1:アニメ「五等分の花嫁」から
©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」製作委員会
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Television, Inc. All Rights Reserved.

同記事では、作品の構造については具体的なことに殆ど触れていませんが、当然、このアニメの背景には日本古代史との関連も含まれています。今回は、その接点と見なされる歴史的事象にスポットを当てたいと思います。

■五嫁の聖地「太田川」

近年、アニメの背景デザインのモデルとなった土地を、「聖地」として取り上げたり、現地を訪れることを「聖地巡礼」と呼んだりしていますが、「五等分の花嫁」(以下五嫁)の場合は、それが愛知県の東海市、名鉄太田川駅周辺であることは既に確定しています。

それは同シリーズの第1期第1話に出てきた次のシーンに象徴されています。

画像2:既に街を挙げての地域起こしか?

この他にもデザインモデルになった同地の構造物は多い様なのですが、詳しくは地元市議会議員さんのホームページに詳しいので、アニメ好きの方はどうぞそちらをご覧ください。

さて、私がまず最初に気になったのは、画像2の背景モデルになっている建物なのです。この建物、駅前の複合商業施設で「ソラト太田川」と言うらしいのですが、私としては少しばかり仰天のネーミングなのです。

何故なら「ソラト」とは、シュタイナー人智学において

 太陽の悪魔

とされる、キリストに対する最大の敵対者であると位置付けらているのです。

 関連記事(外部):ソラト 太陽の悪魔 

メディア表現に「反キリスト」の象徴が描かれることは、スタジオジブリ作品や最近の「天気の子」なども含め珍しいことではありませんが、この能天気としか言えない学園ラブコメ作品の第1話が、いきなり悪魔の象徴から始まる事に関しては、少々驚きを隠せません。

当ブログではメディア作品の「呪詛」については詳しく触れませんが、少なくとも五嫁の冒頭から呪詛的要素が組み込まれていることは把握しておいてよろしいでしょう。そして問題なのは、その「呪い」がいったい何に向けられていて、どうしてそれが東海市太田川なのかという点なのです。

■知多半島北部は古墳地帯

私は中京地区には必ずしも強くないのですが、大都市名古屋の南東、知多半島の付け根から半島の中央部にかけての丘陵地に古墳が多く点在していることは把握しています。

これを Google Map の太田川周辺で「古墳」と検索すると次の様な結果を得ます。

画像3:太田川周辺古墳マップ

この中で太田川駅の東南にある岩屋口古墳などは、知多半島の古墳の中では最大であるとされており、そのような大型古墳の周辺にこれだけしか古墳が見当たらないというのは本来あり得ないことであり、おそらくその多くが、建造後千年以上に亘る歴史の中で、取り壊されたり人家や畑の下に埋もれてしまった、または、未だ古墳として認識されていない森林などに残されていると考えられます。

古墳の配置を考える時、中世まで続いたと考えられる海進時代の海岸線を考慮に入れなければなりません。「Flood Map」で今より海面が7m高かった場合を想定すると、その海岸線は凡そ次の様になると予想されます。

画像4:太田川は伊勢湾の底にあった
(現在の工業地帯は全て海面下にあったとしています)

この画像を見ればお分かりのように、画像3に表示された古墳(群)は、いずれも古代の海岸線上にあることが良く分かります。

現在の太田川駅周辺は海面下に没しているものの、古代期においては伊勢湾内における更なる小内海のような地形をしていたと考えられ、このような地形は船舶が主要な移動手段であった古代期においては、波風を避け船を停泊できる理想の土地であったと予想できるのです。

ですから、ここに人が集まり、巨大な墳墓を構築するような文化が栄えるのはむしろ必然と言えるでしょう。この場合の古墳とは、単なる墓ではなく、沖を行き交う船にとって、大事な目印となっていたのは予想に難くありません。

要するに、太田川駅周辺の旧海岸線上には、古墳時代以前にある程度の規模の文化圏が築かれていたと考えられるのですが、それと五嫁にはどのような関係があるのでしょうか?

■太田川は少女神エリアだった

実は、伊勢湾周辺の遺跡・古墳については昨年5月の過去記事「古代鈴鹿とスズカ姫(3)」で、少女神、すなわち「古代巫女皇后」を主要トピックとして取り扱っています。

その記事で使われた画像において、今回のテーマとなっている「太田川」の位置関係は次の様に表すことができます。

画像5:少女神ゆかりの地と太田川
地図は海進期の予想海岸線を採用

記画像をご覧になればお分かりの様に、太田川は伊勢湾を取り巻く、いわゆる

 少女神エリア

の圏内、その東岸に位置するのがはっきりと読み解けるのです。

五嫁とは、5人の同じ顔の少女達を主人公に置いた物語ですから、ここで「少女」をキーワードに、アニメ聖地と物語の微妙な繋がりが垣間見えるのです。果たして「ソラト」の呪いもこれと関係あるのでしょうか?

■椿古墳の支石墓

調査に出向く頻度があまり高くはない中京地区ですが、画像3,4の最南端に記されている「椿古墳」については現地に出向いて調査を試みています。

この古墳、古墳認定されているので、何らかの発掘資料が残っているのかネット検索してみましたが、残念ながらネット上には殆ど資料らしい資料が見当たりません。

なので、今もそうなのですが現地に出向いた時も手探りで、外観と土地の造形からこの古墳の成立ちを考えなくてはならない状況となりました。

現地へ向かったのは良いのですが、丘陵の麓から中腹にある神明社という神社までは参道が続いているものの、そこから先へは道らしきものが整備されておらず進めなくなってしまったのです。

道なき道を進む体力が私にはないので困っていたところ、同行者が代わりに登ってくださるということで、その方に丘陵頂上部の古墳があると思われる場所で写真を撮ってきていただきました。その写真が次のものです。

画像6:椿古墳の石(1)
画像7:椿古墳の石(2)

この写真を見た時に私も「えっ?」と思いました。何故なら地面に転がるこの石は平たく整形されたものであり、石棺などの構成物とも考えられますが、ならば端が整えられていない大きな石が、ごろっと数点だけこのように残されているのもどこか変なのです。

結論としてまだ断定できないのですが、私はこれを

 支石墓(ドルメン)

の残骸ではないかと推測するのです。

画像8:支石墓(韓国) (引用元:VisitKorea )

この支石墓、福岡など九州北部のものが有名ですが、基本的に朝鮮半島から渡ってきた人々が半島式に死者を埋葬する文化として残して行ったものと言われています。

そうすると、あくまでも仮定の話となりますが、この土地に半島ゆかりの諸民族が流入していたとも考えられ、ここに、これもまた微妙ではありますが、

 少女神 - 朝鮮半島

の繋がりが見出せるのです。

アニメ「もののけ姫」に登場し、少女神の象徴とみなされる少女「カヤ」が、古代朝鮮国である「加耶」と同音の名を持ち、同時に半島式の帽子を被っている点が、以前から不可解な点として残っていましたが、どうやら、少女神を語る時に古代朝鮮王朝の話は切り離せないという点が明確になってきました。

画像9:もののけ姫のカヤ

前回、前々回の記事では、魏志倭人伝の卑弥呼が居たとされる「倭国」とは、おそらく朝鮮半島と日本列島を含む広い地域を指すのではないかとしましたが、椿古墳が半島式支石墓だとすれば、少女神はこの広い「倭国」の中を移動していたのではないかとの類推も可能なのです。

すると、必然的に、古代倭国の女王と少女神の話も、朝鮮半島を支点に繋がってくるのです。

まだまだ、物事を断定するには不十分ではありますが、最後にこのドルメンが今年上映された宮崎駿監督の最新映画「君たちはどう生きるか」に登場したことを、映画をご覧になった方は今一度思い出して頂きたいのです。宮崎氏はなぜこのようなシーンを映画の中に盛り込んだのでしょう?

画像10:映画に登場した半島式ドルメン
公式パンフレットから

ここまでのキーワードを整理すると

 ・五人の少女
 ・少女神
 ・知多半島の支石墓
 ・古代倭国と卑弥呼

そして、アニメ作品に表現される

 ・古代朝鮮王国の象徴

その関係はいったいどのようなものなのでしょうか?そしてもしも「ソラト」が呪いのキーワードであるなら、まさに古代少女神こそが呪いのターゲットではないのかと私は考えるのです。

書籍のご案内

当ブログで頻繁に取り上げている「少女神」という概念は、みシまる湟耳(こうみみ)氏による著書「少女神 ヤタガラスの娘」(2022/1/28 幻冬舎)によってインスピレーションを受けたものです。ブログ記事を読み進めるためにも、まず初めにこちらをお読みになられることを強くお勧めします。



この本を読むことで、日本国民が天皇家の成立ちについて誤解していること、あるいは意図的に誤解させられている事実に気付くはずです。


内海の空の向こうには 隠れし少女の囚われの園
管理人 日月土

推しの子に見る月読尊と伊予

最近のアニメ作品に、様々な日本神話の事象がモチーフとして取り入れられている点については、これまで何度もお伝えしその事例を紹介しています。

今回もその分析手法の中で、最近注目されているアニメ「推しの子」から、少し気になる歴史テーマを取り上げたいと思います。

画像1:アニメ「推しの子」
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

実は、このタイトル画像にそのサインがしっかり現れているのにお気付きになったでしょうか?

画像2:「の」の字に三日月の
デザイン

この作品、「推し」が「星(ほし)」と語調を重ねていたり、主人公の名字が「星野」であること、また、瞳に描かれた六芒星が特徴的であったりと、とにかく普通に視聴すれば「星」が殊更強調されているように見えます。

しかし、画像2のタイトル文字デザインのように、こっそりと「月」のサインが盛り込まれているのに気付くのです。それは何もタイトル文字だけでなく、次のシーンでも現れているのです。

画像3:主人公に兎(うさぎ)の髪飾り
画像4:YOASOBI「アイドル」公式動画より 
兎のデザインに兎の被り物
https://www.youtube.com/watch?v=ZRtdQ81jPUQ
画像5:満月を模したと思われる
キャラ「ぴえヨン」

日本人であるならば、兎(うさぎ)と聞けば普通に月を連想するでしょう。それが無理なこじつけでないことは、タイトル文字および脇役「ぴえヨン」が象徴するイメージを考慮すれば明らかです。

つまり、ここに登場する少女の主人公は、何か「月」に象徴される歴史上の人物と関連付けされている可能性が極めて高いと考えられるのです。

追記

この記事を投稿した6月15日の晩に放送された第9話でも、やっぱりやってくれました。本当に期待を裏切らないアニメですね。


「有」 → 「十」+「月」→ 十(分)な月 → Full Moon(満月) → ぴえヨン

■かぐや姫と月読尊

一般的に、月と関連付けられている歴史上、あるいは神話・寓話上の女性と問われれば、

 かぐや姫

が最初にあげられるのではないかと思います。

かぐや姫は平安時代の前期に書かれたと言われる「竹取物語」に登場する女性で、竹から生まれ、養父母に育てられ美しく育ち、多くの貴人から求婚されるも、最後には使者の迎えに従い月に帰ると言う、おそらく誰もが耳にしたことのある物語の主人公です。

この「かぐや姫」の物語の成立過程を考察すると、私が調査中の少女神との関係性が見えてくるのですが、ここでは、もう一人の月に関連する(おそらく)女性について取り上げます。

それは、昨年の記事「月読尊 - 隠された少女神」でも触れた月読尊(つくよみのみこと)のことです。

記紀では性別不詳、秀真伝では男性として記述されている月読尊ですが、これはおそらく改竄された記述で、実際は女性であったのではないかとの考察を同記事では述べています。

とにかく、月読尊はその事跡に関する記述が極めて少ないだけでなく、祭神として祀っている神社もあまりなく、いったい生前何をされた人物なのか調べる手掛かりがまるで分からないのです。しかし、その名が記紀にしっかり残されていること、また、天照(あまてらす)素戔嗚(すさのお)と、ナギ・ナミから生まれた3貴子の一人と数えられていることから、その歴史的な存在意義は極めて高かったのではないかと想像されるのです。

■イヨツヒメの示すもの

同上の過去記事では次の様な、秀真伝から引用した系図を掲載しました。

画像5:秀真伝に記されたツキヨミ-イフキヌシの系図

系図の改竄手法の一つに、男女夫婦の出身家を交換するやり方が考えられると「三嶋神と少女神のまとめ」で触れていますが、そうすると、この系図に記述されている男性ツキヨミとは「イヨツヒメ」と同一人物ではなかったのか、つまり、女性ツキヨミとは別名イヨツヒメと呼ばれる姫であったとも考えられるのです。

秀真伝式に「イヨツ」と音だけの表記ではよく分からないのですが、これを漢字で書き直してみると、その意味が見えてきます。もちろん、漢字を当てるパターンは幾つも存在するのですが、その中で私にとって一番しっくりくるのが実は

 伊予津

すなわち、伊予の湊(みなと)という土地を現した名前なのです。

私がこの当て字を強く「推す」のには理由があり、伊予の国と言えば当然ながら現在の四国瀬戸内にある

 愛媛県

を指す旧国名であり、何と言っても県名に「媛を愛する」と姫に関する文字が組み込まれているからなのです。ここに、愛媛県という地名としてはちょっと謎な名称が選ばれた本当の理由があるのかもしれません。

そう言えば、昨年公開された歴史(と呪術の)てんこ盛り映画「すずめの戸締まり」でも、愛媛県の港の地が主人公の来訪地としてしっかり描かれていましたよね。

画像6:映画「すずめの戸締まり」に登場した八幡浜港(愛媛県)
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

どうやら、手掛かりの少ない月読尊について何か情報を得るのに、とにかく愛媛まで出向く必要がありそうです。

■伊予の国で見つけた物

そういう訳で、つい先日、私は愛媛県の松山に向かい、三嶋神と縁の深い大三島と対岸の今治、また、宇和海(うわかい)と呼ばれる豊後水道に面したリアス式の海岸線が続く地域の中から、その中央部に位置する宇和島へと調査に向かったのです。

同地についてはまだまだ不案内で、はっきりとこれという成果は報告できないのですが、ここではその中で一番気になった場所の写真を掲載したいと思います。

画像7:宇和島市内で撮影

これが何を意味をするのか、このブログの過去記事をお読みになった方ならある程度察しが付くかもしれません。今回のテーマが「月読尊」に関するものであることを考え合わせれば、おそらくそうであろうと私は考えているのです。

果たして「推しの子」の隠された主人公アイとは「愛媛」の「愛」のことで、もしかしたら伊予の姫君を指しているのではないのか?伊弉冉(いざなみ)の血を受け継ぐ少女神との関係性がまたしても気になってしまうのです。

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  ・「推しの子」推しの話 
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つきのくに よるおすくにの いよひめは
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管理人 日月土

三嶋神と少女神のまとめ

これまで、5回ほど三嶋神についてブログ記事を掲載してきました。

 (23.02.28) 名前を消された三嶋 
 (23.03.15) 甲と山の八咫烏 
 (23.03.28) 加茂と三嶋と玉の姫 
 (23.04.15) 書き換えられた上代の系譜 
 (23.04.29) 伊古奈姫と豊玉姫、そして123便 

記載内容がかなりごちゃごちゃしてきたのと、私自身が少し混乱してきたので、ここで一旦、これまで掲載した内容を整理しまとめたいと思います。

■史書の記述をどう読むか

毎回同じことを言わせてもらってますが、私の史書の記述に対する考え方は以下の通りです。

 (1)史書は基本的に暗号文として解釈する
 (2)暗号化された究極の形式が「神話」である
 (3)日本の史書は西暦700年代の編纂期に統一編集(改竄)されている

例えば、自分の記録を残す時、知られたくない事実は通常は完全に伏せるものです。しかし、その中に次世代に継がせるべき大事な情報があった場合、特定の読み人だけに分るよう、ある程度の法則性を以って事実を書き換えることはあり得ます。私は、史書はそのような意図により編纂されたのだろうと想定しており、複数の史書類を比較検討して、まず解読のキーワードは何であるのかを検討します。

このような情報の書き換えを続けていると、様々な点で論理的矛盾や事実関係の齟齬が生まれるのは容易に想像できることであり、その問題をいっぺんに解決する手法が「神話」、すなわち歴史をファンタジー化してしまうことです。おそらく日本神話は、「天皇家の出自」という、日本の国体を象徴する一家族のルーツを、「神の子孫」という超自然的存在と結び付けて曖昧にしているのだろうと考えられるのです。

読者の皆様の中で、「天皇家が神の子孫」だと本気で信じておられる方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?私は別に、日本の国家運営に一定の役割を果たしてきた長い歴史のある一族を貶すつもりは全くないのですが、事実は事実として開示してこそ、その歴史的伝統は担保されるものだと思っています。

そのような史実を丸めて隠す「神の子孫」思想こそが、先の世界大戦で軍事プロパガンダとして利用されたとは言えないでしょうか?

西暦700年代には、古事記、日本書紀が編纂されますが、この編纂過程においては、各家に保管されていた家史が強制的に回収され、これに従わない者は死罪にされたと言います。また同時に、中国大陸の文物が大量に買い占められたという記録もあるようです。つまり、この時期に

 日本の歴史は改竄を受けた

と言って良いのかもしれません。この時の状況を歴史研究家の間では「書紀合わせ」、すなわち日本書紀に見られる古代史の統一見解に沿って、他の史書についても編纂(改竄)が行われたと見ているのです。

■アニメ作品に見る歴史の開示

前節で述べたように、一般に流布している史書の記述が暗号化され改変されているものなら、当然、その事実を知り、これをデコード(暗号解読)している個人や団体がどこかに存在すると考えなければなりません。もしかしたら、正しく史実が記載されている全く別の史書(正史)が残存しているのかもしれません。

このブログの長い読者様なら既にご存知の様に、私は歴史解説ネタに時々アニメ作品を取り上げます。それが何故かと問われるならば、アニメ作品の基本プロットの中に日本古代史が折り込まれていると確認できることがかなりの頻度であるからなのです。

このブログでは、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」を皮切りに、スタジオジブリ作品である「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」を古代史を語るテキストとして使って来ました。

画像1:本ブログで取り上げたアニメ作品
アニメ研究ではなく歴史研究ですよ

これらの作品は、どうしてなのか、手元に用意した史書類よりも詳細に当時の人間関係などを表現しているケースが見られるのです。おそらく、これらの作品の考証を担当したスタッフの中に、改竄された記紀などではなく、正史に記述された内容をよくご存じの方がいるのだろうというのが私の予想です。

どうして、隠蔽された史実を劇作品の中にわざわざ取り入れるのかは重要な問題でありますが、それについての考察はここでは控えます。私は、史書類のデコードだけではなく、これらの作品に密かに埋め込まれた古代史実の分析結果をも資料として利用していることは予めご了承ください。

■「少女神」という概念

「少女神」という言葉の意味は、その概念を最初に取り上げた過去記事「少女神の系譜と日本の王」を読んで頂きたいのですが、正直に言って、「みシまる 湟耳」さん著の書籍「少女神 ヤタガラスの娘」からの借用です。

ものすごく簡単に説明するなら、古代天皇家は、特殊な能力を持つ少女(少女神)の元へ婿入りできた男性が王権を得ていたのではないか、そして、その少女を輩出する家系こそが、三嶋であり八咫烏(ヤタガラス)なのではないかと論説しています。

もうお分かりのように、三嶋神に関するこれまでの分析も、この「少女神」の概念を切り口に行ってきたのです。

日本神話に登場する神々の名前が、実はある歴史上の特定人物を幾つかの変名に置き換え(一体分身)たものであることは、私でなくても多くの歴史研究家が既に気付いていることだとは思いますが、その場合、個々の史実についてはそれで説明ができても、血脈を辿るとどうも上手く行かない、むしろ混乱の度合いが深まるケースが多かったのではないかと思います。

しかし、これらをこれまで一般的であった男系による王権継承から、女系による王権継承(少女神の血統)に置き換えると、全体の見通しがたいへんシンプルになることに気付くのです。

■女系による三嶋神の系譜

さて、能書きが長くなってしまいましたが、これまでの三嶋神に関する考察を、少女神による女系継承に置き換えるとどうなるかを、一つの系図として作成してみました。

この図は、女系の血筋を中心に、それぞれの代の女王に男性王が婿入りするという体裁で描かれています。

画像1:女系による王権継承と上代の王

男性王の出身家は記紀で后(きさき)が出た家とされているものと置き換えています。おそらく史書編纂者が採用しただろう改竄手段の逆を行っていると考えてください。

 木花開耶姫(大山祇の娘) → 瓊瓊杵尊(大山祇の息子)
 媛蹈鞴五十鈴媛(大物主の娘) → 神武天皇(大物主の息子)

彦火火出見尊の場合は、その変名である三嶋湟咋と並列に置かれることの多い大山祇の家系と仮定します。また、鸕鷀草葺不合尊の場合は、変名に大物主とあるので、大物主の家系としました。

さて、この図を見てどう思われるでしょうか?少なくとも、

 上代天皇は血が繋がっていない

ことがお分かりでしょう。要するに、男性王の出身家は女王に対して外戚となる関係なのです。しかも、この4代に亘る短い系図の中に、既に2つの外戚家系が入り込んでいるのです。

もちろん、この図は少女神仮説を元に作成しているのですが、この系図を用いることで以下の議論がずい分と説明し易くなったことにお気付きになったでしょうか?

 ・天皇(男性)の出自に関する諸議論
 ・魏志倭人伝に記述された女王国

よく、「〇〇天皇は△△出身だった!」とセンセーショナルな歴史議論がなされることがありますが、そもそも、男に王の継承権がないのであれば、どこの出身地かはそれほど大きな問題とはならないのです。

また、魏志倭人伝が記述する「女王国」という古代王国の捉え方は全く異質であるどころか、むしろその通りだというこになるのです。

さて、これが正しいとするならば、次に大きな問題が控えています。

 ・大山祇とは何者なのか?
 ・大山祇と三嶋、そして八咫烏との関係は?
 ・天皇家はいつから男系継承となったのか?

果たして、女系継承が突然男性継承に変わることがあるのだろうか?あるいは巧妙に男系継承に置き換えているだけなのか?ならば、天皇を名乗る外戚家はいったいどこからやって来た何者なのか?

実は、現在の皇室に直結する極めて重要な問題を孕んでいるのです。


管理人 日月土

伊古奈姫と豊玉姫、そして123便

今回の記事を読み進める前に、まず次の写真を見て頂きたいと思います。

画像1:123便内から地上を見た写真

以前から(新)日本の黒い霧ブログを読まれてきた方なら、一目でこの写真が何かお分かりになったかと思います。これは、1985年8月12日、羽田空港から大坂伊丹空港に向けて飛んだ日本航空123便の機内で撮られた写真です。

撮影場所についてはメディアで様々言われていますが、私の行った現地調査の結果では、これは

 東に向かう高度600~1000mの低高度から
 伊豆半島東岸の白浜海岸付近を撮影したもの

と結論が出ています。

方角については、この撮影者とその家族が機体の後方右寄りに着座していたこと。高度については、窓から見える地上の景観から数学的に計算して割り出したものです。

一般には、この写真は「高度4000m以上の高度から相模湾を見下ろしたもの」とされていますが、その説明が間違いであることは、この写真が窓枠の少し手前から撮影したものにも拘わらず、窓の中央部まで地上の景色が写り込んでいることから分かります。

4000mの高度では、窓から下を覗き込まないと地上の景色は見えません。それは普段飛行機を利用している方なら直ぐに確認できるはずです。

要するに、123便は相模湾上空をかなり低い高度で東に向かって飛んでいたことになります。その事実は、公表されているボイスレコーダー(CVR)やフライトレコーダー(CFR)では全く確認できないのです。つまり、

 CVRもCFRも本事件解明の資料とは成り得ない

有体に言えば、どちらも改竄された上で公開されているという結論になり、私がこれらの公的資料を一切用いないのもその点に起因するのです。

これらの調査の経緯については(新)ブログ記事「折れなかった垂直尾翼(1)」を読んで頂きたいと思います。

■写真に写ったもの

画像1の写真を見てまず目につくのは、2番の橙〇で囲んだ黒い物体です。ぼやけていて色も形もはっきりしていませんが、おそらく撮影者もこれが気になって撮影したのだと思われます。

これについては、私もかつては「戦闘機なのでは?」と仮説を提示しましたが、その後、専門家による画像分析でオレンジ色の発光が確認できたと週刊誌で報じられました。

それに続き、これが航空機なのかミサイルなのか、はたまたUFOなのではないかと、とかく議論の的になりますが、今回は歴史ブログの記事なのでこの物体には注目しません。

私が今回注目するのは1番の赤〇で囲んだ部分なのです。ここに何があるのか、読者の皆様はお分かりになるでしょうか?斯く言う私もその存在が気になりだしたのは最近のことなのです。

画像2:伊古奈比咩(いこなひめ)神社本殿

下田市白浜海岸の中間部に、相模湾に突き出した小丘陵があるのですが、この伊古奈姫神社は丘陵の麓に本殿、そして境内の階段を昇った頂上部には樹木に囲まれた奥宮が鎮座します。

画像3:伊古奈比咩神社奥宮

さて、これだけだと、写真のフレームに収まったただの神社という話で終わってしまうのですが、肝心なのはその「伊古奈姫」というお姫様の正体なのです。

■三嶋神の后(きさき)

伊豆半島に三嶋(三島)神社が多いことは、過去記事「名前を消された三嶋」でお伝えしましたが、この神社、名前こそ「伊古奈姫」と女性の名前を冠していますが、実は同じく三嶋神を祀る神社の一つなのです。

画像4:祭神の案内板

では、伊古奈姫とは誰なのか、そして三嶋神(三嶋湟咋:みしまみぞくひ)との関係は?実はそれについて昭和初期に書かれた研究書が同社のホームページに掲載されているので、それを読んでみることにしましょう。なお、漢字は基本的に旧字体ですが、フォントの存在していない異体字については現代漢字に置き換えています。

(イ)伊古奈比咩命に就いて

 本社の主神が伊古奈比咩命にましますことは、既に述べた如く祭神の御名をそのまま社名とする延喜式の記載からでも容易に首肯することが出來るが、然らばその神名並に神格等に就いては如何であらうか。

【古典其他に見える神名】 現神名の顯はれた記事は、日本後紀 (釋日本紀十五所引)淳和天皇天長九年五月二十二日 (癸丑)の條に

 伊豆國言上、三嶋神、伊古奈比咩神二神預名神

とあるを初見とする、爾後文德實錄嘉祥三年十月八日 (壬子)の條を始め、同十一月一日(甲戌)、仁壽二年十二月十五日(丙子)、齊衡元年六月廿六日 (己卯)の各條に見え、その都度神位の加叙が行はれてゐる。次いで延喜の制伊豆國賀茂郡四十六座中の一に記載せられ、降って江戸時代の初期慶長十二年大久保長安奉納の鰐口にも「白濱伊古奈比咩命大明神」とき刻記せられてゐる。

【神格と神系】 上述の如く正史古典に嚴然たる御名を遺させ給ふ大神にましますのであるが、その神格と神系については、古典に記す所尠く、僅かに左の數點を拜するに過ぎない。先づ神格については前記日本後紀逸文中天長九年の條に

  令卜筮亢旱於内裏、伊豆國神爲祟

次で伊豆國より言上して三嶋神・伊古奈比咩神の二神を名神に預るとあるから、此處に言ふ伊豆神は卽ちこの二神にましますことが知り得られ、且つ亢旱を祈って驗あることが推察されるが、更に同文に次で次の一條が記載される。(以下略)

引用元: 伊古奈比咩命神社公式ホームページより

この文献を読み進めると、後段に伊古奈姫 が

 三嶋神の後后

を指すとの記述が見られます。

後后とは二番目の后という意味ですから、当然正妻に該当する本后も存在し、同文献には本后(阿波姫:あわひめ)とその娘(物忌名姫:ものいみなひめ)の名前も記されています。但し、官位を先に授かったのが後后の伊古奈姫だったため、二人は怒って祟ったとの伝承が残されています。

本后と後后、ここに、以前から話題にしている

 双子の皇后 あるいは 二人の皇后

という、少女神とはまた別の、女系史に関する重要テーマが含まれていることに気付かされます。

画像5:このアニメも同テーマを扱ったものか?
©田中靖規/集英社・サマータイムレンダ製作委員会

三嶋系の神社は、大抵は男神「三嶋神」を表に出しますが、どうしてこの神社では后の名を用いるのでしょう?この文献を読むと、祭神五柱の内、主祭神は伊古奈姫と三嶋神ですが、三嶋神については説が定まらず、筆頭の主祭神は「伊古奈姫」であると断じているのです。

■三嶋湟咋の后と豊玉姫

ここで前回の記事「書き換えられた上代の系譜」の画像1を見てみます。これら同一家系の変化と思われる系図の中では、三嶋湟咋(=賀茂建角身)の后の名が不明でした。

画像6:三嶋湟咋の后の名が不明

ここで、この研究書の結論を適用すれば

 ① = ①’ = ①” = 伊古奈姫

と置き換えることが可能です。

ところが、男系継承で記載されている日本書紀と比較すると、ちょっと訳の分からない感じになります。

画像7:日本書紀との比較

これをどう解釈したらよいのか?私は日本書紀の記述は

 後に男系化された古代王朝の系譜

と考えられるので、ここは女系解釈に沿って

 伊古奈姫 = 豊玉姫
 三嶋湟咋 = 彦火火出見

と置き換えが可能であろうと見ています。これを私は「一体分身」の原則と捉えており、これまで他の例でも見てきたように、個人の功績や職名、諱(いみな)などそれぞれに別の名前を用い、まるで複数人が存在していたかのように史実を攪乱し捏造する、史書編集者の常套手段ではないかと見ているのです。

しかも、この混乱した話を神話(ファンタジー)としてしまえば、後世の読者は話の辻褄について事実関係を訴求する意欲を大いに削がれるばかりか、現代の神道のようにあたかも神話の神々が実在するかのように勘違いするかもしれません。

このように暗号化された史書を読み解くには、史書編集者がどのような改変手法・暗号化手法を適用したのか、それを見抜かなければなりません。そして、何故そんなことをしてまで史実を隠そうとしたのか(あるいは逆説的に事実を残そうとしたのか)、その意図を探るのもまた重要なテーマとなるのです。

さて、

 天皇の祖先が三嶋湟咋?

これがいったい何を意味するのか、今後、より深く見て行きたいと思います。


* * *

今回の記事冒頭では、123便事件を取り上げましたが、そもそも歴史研究を始めたのが、同事件発生の大きな理由に古代から現代まで横たわる何か大きな社会的構造の歪みが関わっているからだろうと見立てたからなのです。

その歴史的追及が直接この事件の現場と関わってきたことに、何か偶然でないものを感じてなりません。これまでの調査から、123便事件の背景には、昭和天皇と美智子妃殿下(当時)の存在が非常に大きいだろうとしてきましたが、ここにきて、およそ2000年の時を超え、古代と現代の天皇、そして后の関係が繋がってきたように感じるのです。


管理人 日月土

猿と卑しめられた皇統

前回の記事「豚と女王と木花開耶姫」ではスタジオジブリのアニメ映画「紅の豚」を題材に取り上げ、そこに登場する少女キャラクターの「フィオ」が、どうやら日本神話に記載されている「木花開耶姫」(このはなさくやひめ)をモデルにしているだろうという結論を導きました。

画像1:フィオ

前回は他の登場人物については歴史モデルの分析を行っておりませんでしたが、残りの主要キャラ二人(マルコとジーナ)についてもその歴史モデルを確定させ、また、その意味について考察したいと思います。なお、この分析は前回2月1日配信のメルマガ71号の記事解説と重複する部分がありますので、メルマガの購読者様は予めご了承ください。

■木花開耶姫とその父母

マルコとジーナ、そしてフィオの3人の関係については、映画の設定上は血縁関係はありません。しかし、そのなんとも近しい関係が、「マルコとジーナ」の夫婦関係、そして「フィオ」が2人の間に生まれた娘をそれとなく匂わしているのは、物語の展開からそれほど異論がない解釈かと思います。

画像2:3者の関係

この設定、敢えて血縁関係にしなかった別の意図も見え隠れするのですが、ここでは血縁関係と捉えて考察を進めて行きます。

さて、まずはフィオのモデルとなった木花開耶姫なのですが、日本書紀や古事記、また秀真伝におけるその親子関係は次のようになります。

画像3:史書における関係

これをそのまま取れば、マルコのモデルは大山祇神なのかとなりそうなのですが、この母不詳というのが曲者で、何故に10代アマカミ(上代における天皇)瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の皇后ともなった方の、その母の素姓が記されていないのか、それ自体が大きな謎だとも言えます。

高貴な方なのに母の名が不詳である、これは何も木花開耶姫に限らず、瀬織津姫(せおりつひめ:アマテルカミ皇后)、栲幡千千姫命(たくはたちぢひめ:オシホミミ皇后)など他の上代皇后についても言える話なのです。

古い話だから情報が欠けいても仕方がないと思われそうですが、果たしてそれだけで済まされる問題なのでしょうか?

2年前の令和3年、アニメ映画「もののけ姫」を分析し、登場人物の少女「サン」が木花開耶姫をモデルとしていると結論を出しましたが、その時にこの父母問題を取り上げ、推敲を続けた結果、アニメで表現されている次の登場人物(動物)との関係性から、

 サン(少女) - モロ(犬神:父兼母)

これが

 木花開耶姫 - 味耜高彦根(あぢすきたかひこね)

の関係に対応することに気付きました。詳しくは次の動画を改めてご確認いただきたいと思います。

動画:もののけ姫とモロ

秀真伝には味耜高彦根の妻はシタテルヒメ(下照姫)またはオクラという名であると記されていますが、下照姫はアマテルカミの妹としても登場しているので、ここでまた、貴人と同名の姫が別家系に、それも比較的近い世代に再び現れると言う不自然さを覚えたのです。ですから私は、この時の分析では二人の下照姫を同一人物とみなしました。

これらの考察から、大山祇神は木花開耶姫の実の親ではなく養父であり、実際の父母は次のような関係であっただろうと結論付けたのです。

画像4:分析後の親子関係

但し、この解釈に全く問題が無い訳ではありません。味耜高彦根と下照姫は世代的に2代違うので、年齢的に孫と祖母位歳が離れていたと考えられます。いくら若年婚が普通だった昔とは言え、30~40年年長の女性を妻に迎え木花開耶姫を含む複数の子を残せるのかという疑問は残ります。

画像5:世代の違いがこの解釈の障害に

ここで解決のヒントを与えてくれたのが「少女神」という女系家系の概念なのです。既にお伝えしているように、下照姫は伊弉冉尊(いざなみのみこと)の血を継ぐ少女神であり、味耜高彦根が娶った下照姫とは、かの下照姫の血を継いだ少女神、つまり、世襲を表す意味で「下照姫」が使われたと考えれば筋が通ります。よってここでは、後継の下照姫のことを、秀真伝に従って「オクラ」と表記します。

この概念は非常に重要であり、前述したように上代皇后の母の名がどうして史書からきれいに消されているのか、その理由を考える上で大きな意味を持ちます。端的に言ってしまえば

 女系継承から男系継承へと史書の書き換えが行われた

と考えられるのです。これは史書を解釈する上での大きな方法論の転換を示唆しているのですが、ここではこれ以上触れないことにします。

以上の考察を以って、木花開耶姫の実の両親は次の様であっただろうとの推理が成り立つのです。

画像6:少女神の暗号と解釈して世代を調整

以上で主要登場人物の関係性は示せたのですが、問題なのはここに現れた味耜高彦根とオクラをどう解釈したら良いのか、あるいはモデルに使う意味とは何なのか、つまりは映画製作者の真意なのです。

■味耜高彦根の再考察

この問題を解決するために、まずは味耜高彦根の属性について整理してみます。まずは史書に記述されている描写、次にジブリ作品における描写について、その主要ポイントを書き出してみましょう。なお、これにはこれまでの分析結果を採用するものとします。

 A-(1)父は初代大物主の大国主、母はタケコヒメ(※秀真伝から)
 A-(2)妻の名は下照姫 (※下照姫後継のオクラのことを指す)
 A-(3)天稚彦(あめわかひこ)と見た目が良く似ている
 A-(4)妻から和歌を献上され御統(みすまる)と讃えられる
 A-(5)「もののけ姫」の作中で犬神の「モロ」と表現される
 A-(6)「紅の豚」の作中で呪われた豚の「マルコ」と表現される

さて、上記A-(3)に天稚彦が出てきたので、次にこの登場人物についてその主要属性を書き出してみます。

 B-(1)父は天国魂アマクニタマ(※秀真伝から)
 B-(2)葦原中国の平定に赴いたが帰還しなかった
 B-(3)返し矢に当たり死ぬ
 B-(4)「もののけ姫」の作中で「アシタカ」と表現される

B-(3)とB-(4)は深く関係しており、本来「アシタカ」は瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)をモデルにしているのですが、作中に矢で打たれ一度絶命するシーンがあることから、同時に天稚彦をも表現していると結論が出ています。

そして、秀真伝には瓊瓊杵尊とホノアカリが兄弟で、二人でそれぞれ王朝を開く、2王朝並立時代があったとの記述があります。

画像7:秀真伝に残されている2王朝並立

瓊瓊杵尊とは天孫降臨にも登場する現皇統へと続く御正統ですから、間違っても他の家系と同一表現するとは考えにくく、史書において極めてマイナーな存在である天稚彦とは、瓊瓊杵尊とは同列の存在、すなわち「ホノアカリ」を指すとしか考えられないのです。よって、

 天若彦=ホノアカリ -[1]

という結論を既に分析によって得ています。

ここで、気になるのがA-(3)なのです。この「見た目が似ている」と表現から、私はそれを「両者共に正当な後継者(大物主出雲皇統とアマカミ天孫皇統)なのにも拘わらず、記紀からその史実を削除された気の毒な存在」と、境遇が似ているという観点で捉えていましたが、実はそっくりそのまま次の関係でも矛盾しないことに後から気付きました。

 味耜高彦根=天若彦 -[2]

何故ならば、[1]、[2]から

 味耜高彦根=ホノアカリ -[3]

が導かれるのですが、これがA-(4)の「御統」(みすまる)、すなわち歴代皇統という意味に実にぴったりと収まるのです。

A-(1)から味耜高彦根は大国主の出雲皇統と考えていましたが、そもそもホノアカリはアマカミ皇統から排除された存在ですから、後の史書編者が出雲皇統に付け替えたとしてもおかしくありません。そして、それを補強する暗号的記述がB-(2)であるとも考えられるのです。

何より、出雲皇統を強引に兄弟の事代主(ことしろぬし)に奪われたのならば、出雲皇統内での争いに関する記述がどこかにあってもよさそうなのに、今のところはそれは見つかっていません。

よって私は次の様に結論を出しました。

 味耜高彦根とは記紀から抹殺された上代天皇ホノアカリである

つまり、ジブリ映画キャラクターの「モロ」及び「マルコ」はホノアカリを指していることになります。当然ながら「ジーナ」はその妻オクラ(下照姫後継)を指すことになります。

画像8:千葉県船橋市の茂侶(もろ)神社
社名が出雲系なのに主祭神が木花開耶姫という不思議な神社。県内の他の茂侶神社は主祭神が出雲系の大物主。姫が味耜高彦根の娘なら話が通るが、実はそれ以上の隠された秘密があったのだ。

■猿から豚へ、豚から猿へ

前回の記事では「豚」の解釈について幾つか試みてみましたが、その中で同じジブリ映画の「千と千尋の神隠し」に出て来る豚についても簡単に触れています。

その中で「紅」と「豚」の組み合わせが千葉県銚子市・旭市周辺を指す、すなわち特定の土地を表す記号の意味があるのだろうと指摘しています。

詳しくは過去記事「千と千尋の隠された神(2)」をご覧になって頂きたいのですが、同記事の最後に

 油屋のモデルは猿田神社(千葉県銚子市)

とあるのにご注意ください。

「千と千尋の神隠し」は間違いなく、日本神話の神「猿田彦」(さるたひこ)を意識しているのです。それは、登場人物の「ハク」が「白」と書き換え可能で、この字は更に

 白 = 百 マイナス 一 = 九十九

となり、九十九とは銚子を北端に始まる九十九里浜を指すと考えられるのです。

また「白」は「白鬚」(しらひげ)すなわち「猿田彦」を表す符丁とも考えられます。

千葉県東総地区が猿田彦所縁の土地であることは過去記事「天孫降臨とミヲの猿田彦」、「椿海とミヲの猿田彦」にありますので、ぜひそちらにも目を通してみてください。

この猿田彦なる存在は天孫降臨時の道案内の神として有名ですが、謎が多く、秀真伝の研究者である池田満氏は

出自は不明だが、かなり高貴な家柄の出であろう

と述べており、私が師事を乞うている歴史研究家のG氏は、猿田彦と出雲の関係について

猿田彦の足跡は、出雲族の分布と被っている。おそらく、製鉄や土木など出雲社会を指導したのが猿田彦とその一族であろう。

と語っています。

猿田彦を祭神として祀る神社は全国に見られ、主祭神でなくとも神社の鳥居の傍に猿田彦神社と書かれた石碑や小さな祠を見ることは珍しくありません。これだけポピュラー神様なのに、他の神々との関係性がまるで希薄なのは、いったいどういう事なのでしょう?

そもそも、人(あるいは神)に向かって「猿」などと獣の名で呼ぶことは不遜の極みです。ですから私は

 猿田彦は呪われた神

と解釈していますし、その妻とされている猿女君(さるめのきみ)あるいは天鈿女命(あめのうずめのみこと)も同じように卑しめられた存在と見ています。

さて、以上の説明をご覧になって私が何を言いたいのかお分かりになったでしょうか?まとめてみると、猿田彦は

 ・高貴な人物と考えられるが出自は不明
 ・出雲族と関係が深い
 ・史書では卑しめられた存在

となります。

これらはまるで、前節で取り上げた「ホノアカリ」の境遇とそっくりではないでしょうか?そして何より、史書が獣(猿)の名前を冠したところなど、ジブリ映画の中で、獣(豚)の姿(※)で表現されたホノアカリと見事に共通性が見られるのです。
※「もののけ姫」では犬

以上はかなり荒っぽい論理展開ではありますが、ここで私はこの考察に一つの結論を出したいと思います。

 猿田彦とは上代天皇ホノアカリのことである

そして必然的に、猿女君とはその少女神皇后であるオクラ(下照姫後継)という結論に到るのです。

画像9:失われたホノアカリ王朝とその変名
記紀から名が消されたと同時に、複数の変名より事跡が残された
画像10:千葉県銚子市の猿田神社
もしかしたら、ここがホノアカリ王朝の名残なのかもしれない

例え2000年前の出来事であっても、この国の史実に絶対残してははならない存在、それがもう一つの王朝の始祖ホノアカリでありその妻オクラである。そして、失われた王朝への呪いが現代のアニメ作品に到るまで色濃く反映されている・・・

もしもそれが事実なら、日本とはなんと執念深くも恐ろしい国なのだと思わずにいられません。


秋深く赤城の山に踏み入れば清き流れの大猿の滝
管理人 日月土

豚と女王と木花開耶姫

昨年、みシまる湟耳(こうみみ)氏の著書「少女神 ヤタガラスの娘」を読んで以来、「少女神」をテーマにそれなりの本数の記事を書いてきました。

この「少女神」を切り口に近年のアニメ作品を分析すると、そこにはまた共通する歴史的プロット、キーワードが見出せるのです。直近の投稿でも「SPY×FAMILY」、「ダーリンインザフランキス」を取り上げましたが、そこにはやはり

 古代天皇の皇后となった女性シャーマン(少女神)

の姿が見出せるのです。

さて、本ブログではアニメ分析の最初の取り掛かりとして、スタジオジブリの大ヒット作「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」を題材に取り上げ、そこに登場する人物の関係性が日本神話に登場する神々(実際は実在した古代天皇とその関係者)のそれに近い、といよりは、おそらくこれらの作品は日本神話を基にストーリーが組まれているのだろうと、結論付けています。

これが単なる神話のパクリだというだけの話ならば、アニメファンに喜んでいただいてこの話題は終了なのですが、これまでの分析の結果、どうも、日本書紀や古事記、秀真伝にも書かれていない要素がアニメには描かれている、要するにアニメ制作サイドは一般に普及している史書以上の情報を持っているらしいことが分かってきました。

そこで、本ブログでは、現代アニメを「もう一つの史書」とみなし、他の史書と比較検討しながら、そこに描き込まれた真の歴史を読み解こうと試みるものです。私自身は間違ってもアニメブログにするつもりはないのですが、何だかアニメばっかり取り上げてふざけた歴史ブログだと思われているのならば、それは私の実力不足なのでどうかご容赦ください。

■紅の豚:他の作品との共通点

今回はスタジオジブリの作品の中でも、少し時間を遡った1992年の劇場映画作品、「紅の豚」について分析を試みます。

画像1:紅の豚

さて、この「紅の豚」ですが、豚がいきなり主人公というのですから、設定としてはかなり突飛であると言えます。宮崎監督としては大人向けのアニメ作品を作ろうとしたとエピソード的には伝えられているようですが、鳥獣戯画のようなハイセンスな婉曲表現を狙った訳でもないことは、その他の登場人物が全て普通の人間として描かれ、特に風刺の要素などが見られないことからも窺い知れます。

それなのに主人公だけが動物に、それも豚などと表現したのか、既にこの辺りから何か別の意図があることを予見させるのです。一応、作中でマルコは「呪いを掛けられて豚にされた」と説明はあるのですが、その経緯や物語終了後にどうなったかなどは一切説明されていません。

同作品を観ていない方のために、ここではまず分析の対象となる登場人物とその関係性を簡単にまとめてみました。細かい設定やストーリーについては本作品をぜひご覧ください。

画像2:主要登場人物
血は繋がっていないが親子の世代関係である

さて、ジブリ作品が大好きな方なら(私は違いますが)、「呪いを掛けられて豚になった」という説明を聞かされて直ぐに次のシーンを思い出すのではないでしょうか?

画像3:「千と千尋の神隠し」から豚になった両親と驚く千尋

そうなのです、「豚」という記号は、「紅の豚」公開から10年後の2002年のジブリ作品「千と千尋の神隠し」で再び登場しているのです。

過去記事「千と千尋の隠された神(2)」では、「紅の豚」のタイトルに使われた「紅」と「豚」のキーワードが、それぞれ「紅花」と「養豚業」のことを指し、それが、かつては紅花の産地であり、現在は養豚業が盛んな、千葉県東総地区、現在の銚子市・旭市周辺の土地を表す記号ではないかとしています。もちろん、この土地は、「千と千尋の神隠し」でも舞台のモデルとなった土地であろうと結論付けています。

ここから、両作品が非常に密接な関係にあることが窺われるのですが、千尋が栲幡千千姫(たくはたちぢひめ)をモデルにしていることはもう分かっていますから、「紅の豚」もおそらく同時代の古代天皇とその皇后、すなわち少女神をモデルにしているのが予想されるのです。

■どうして豚でなければならないのか?

上述の過去記事では、土地を表す記号としての「豚」を想定しましたが、「紅の豚」における表現からは、特定の土地(千葉県東総地区)を指している感じは伝わって来ません。そもそも作中の舞台が第一世界大戦後のイタリア、そしてアドリア海という設定ですから、日本国内の土地を予見させる要素はゼロと言って良いくらいです。

すると、「豚」が指示す意味は、おそらく土地に拠るものだけではないことが分かってきます。それならば、「豚」の文字にどのような含意があるのか、そこをもう少し詳しく見て行くことにしましょう。

日本語の「豚(ぶた)」は中国語では「猪(zhu)」と書きます。猪はもちろん日本では「いのしし」となります。ここでは

 豚 ≒ 猪

としましょう。さて猪と言えば十二支を表す「亥」と同義であると見なせます。すなわち

 豚 ≒ 猪 ≒ 亥

となります。

さて、亥に関しては「亥の子」というお祝い日があるのをご存知でしょうか?Wikiペディアには次のように書かれています

亥の子(いのこ)は、旧暦10月(亥の月)の上の(上旬の、すなわち、最初の)亥の日のこと、あるいは、その日に行われる年中行事である。玄猪、亥の子の祝い、亥の子祭りとも。
主に西日本で見られる。行事の内容としては、亥の子餅を作って食べ万病除去・子孫繁栄を祈る、子供たちが地区の家の前で地面を搗(つ)いて回る、などがある。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A5%E3%81%AE%E5%AD%90

どうやらこのお祝いは、猪が非常に多産であることから、それにあやかり子孫繁栄を願って亥の日に行われるようなのです。ここで、「豚」に生殖・繁殖の意味が加わります。

さて、次に調べるのは、十二支の「亥」の字が持つその真意についてです。私たちは十二支と言えば、直ぐに12種類の動物を思い描きますが、陰陽五行におけるそもそもの十二支の定義とは、

 樹木の成長過程

を表すものであったと言われています。現在使われている動物を対応させる形式は、覚え易さのため後に普及したものだとも言われていますが、真偽の程は私も良く分かりません。

この植物形式による十二支の解釈は、具体的には、

 子(ね) → 種となって次の力を蓄えている状態
 寅(とら)→ 芽が伸び始める
 申(さる)→ 実の形ができる

などの解釈が付けられています。これに従って「亥」の字を解釈すると

 亥(い) → 種に成長力がみなぎった状態

となります。亥と子の違いは、亥(い)は種子として完成したことを表し、世代交代前の一サイクルが完了したこと、そして、子(ね)は次世代のサイクルが新たに始まったことを意味します。ここから、「豚」の字には「完成した種子」の意味が含まれているとも解釈可能なのです。

動物的解釈の「生殖・繁殖」と植物的解釈「種子の完成」、この2つの言葉を聞いて読者の皆様は何を想像するでしょうか?私はここから、次の言葉を連想します。

 生殖・繁殖  → 血の継承
 種子の完成  → 遺伝子

そして、遺伝子による血の継承とは、前回記事「大空のXXと少女神の暗号」で分析した「XX」(ダブルエックス)の解釈と見事に重なってくるのです。

■キャラ名が示すもの

ここで、登場人物名を分析してみます。もう一度画像2を見てください。

まずはジーナですが、イタリア語表記では「gina」となりますが、これはおそらく「女王」を表す「regina」の省略形であると考えられます。

次にフィオですが、イタリア語表記では「fio」となり、これもジーナと場合と同様に「花」を表す「fiora」の省略形なのでしょう。

「女王」は日本の事情を考慮して翻訳すれば「皇后」となるのは説明不要でしょう。そして、「花」の付く古代皇后は誰なのか、それはこのブログ記事のタイトルを再度眺めて頂ければ直ぐにお分かりになると思います。

この歴史上の皇后はジブリ映画「もののけ姫」では「サン」のモデルになりました。詳しくは「もののけ姫」に関する過去記事をご覧になってください。

さて、問題なのは「マルコ・パジェット」で、あだ名の「ポルコ・ロッソ」がイタリア語の「porco rosso(赤い豚)」を表すのは良いとして、本名がいったい誰を表すのかが私もまだ完全には解読し切れていません。

ずばりその名が示す様に、新約聖書の聖マルコを指すのではないかとも考えたのですが、どうもしっくりきません、しばらくしてこれではないかと閃いたのが次のキャラクターです。

画像4:ちびまる子ちゃん
  漫画連載:1986-1996、
TV放映:1990-1992

いくら何でも親父ギャグが過ぎるのではないかと思われるかもしれませんが、このキャラとの関係を疑った理由は名前の響き以外にもあるのです。

それは、「紅の豚」の公開時期とTV放映・漫画掲載の時期が重なっていること、そしてこの時期「ちびまる子ちゃん」は全国的に大ヒットしていたことが挙げられます。

そして何より、このキャラクターが少女時代の作者、「さくらももこ」さんの自伝的肖像であるという点なのです。作者の名前には

 桜と桃

の2つの花の名前が刻まれていること、そして何より「紅の豚」の主題歌が、シャンソンの名曲「Le Temps Des Cerises」、邦題

 さくらんぼの実る頃

である点なのです。

イタリアが舞台なのにどうしてカンツォーネ(Canzone)ではなくフランスのシャンソン(Chanson)なのか、これは、この映画の冒頭から非常に気になった点でもあります。

そして、さくらんぼ(Cerise)とは、桜の木の種子のことであり、「種子」を逆に読めば「子種」となります。マルコ(男性)の「子種」と「皇后」(女性)の組み合わせに次世代の「花」(女性)が加わる、この関係が何を示すのかはこれ以上言葉にしなくても明らかでしょう。

これらの表現の一致を果たして「偶然」で片づけて良いものなのでしょうか?私はこれを、宮崎監督個人の着想を超えた、出版・アニメ制作業界が結託した高度な大衆心理誘導工作の一部だと捉えるのです。


Longtemps, longtemps, longtemps
Après que les poètes ont disparu
Leurs chansons courent encore dans les rues(*)
管理人 日月土

*「L’Âme des poètes」(詩人の魂)より

大空のXXと少女神の暗号

年が明けたばかりの今月6日、某所(後で説明)の現地調査に向かったのですが、移動中に空を見上げて驚いたのが、そこに描かれた二つの「X」の文字だったのです。その状況は(真)ブログ記事「新たな祭の始まり」で触れています。

それが自然にできた雲によるものなのか、あるいは飛行機雲なのか、その発生源については未だに不明ですが、空に文字様の雲を見かけるのは必ずしも珍しいことではありません。それでも今回驚いたのは、そこに描かれた文字が「XX(ダブルエックス)」であるということ、また「XX」を見たのがこれで2回目だということなのです。

最初の目撃体験については、昨年4月の(真)ブログ記事「大空のダブルエックス」で触れていますが、何より不気味に思えたのが、「XX」を目撃した2回の調査活動の目的が

 少女神のルーツを探る

という、同じテーマであったことなのです。

画像1:2度出現したXX状の雲

■ダリフラのXXの意味を再考する

4年近く前、(神)ブログを始めた頃に2018年のアニメ作品「ダーリン・イン・ザ・フランキス」(以下ダリフラ)を取り上げ、そこに隠された日本古代史について分析を行いました。

取り敢えず、その時点で気付いた要素については一通り記事にしたつもりだったのですが、そう言えば、このアニメのタイトル画には「XX」が2つも描かれていたのを思い出したのです。

画像2:ダリフラのタイトル画

ここで、過去の記事を読み返してみたのですが、当時はまだ上古代における皇后兼巫女の女系継承問題、いわゆる「少女神」についてはその概念すらなかったので、分析の方向性は

 双子の皇后

すなわち、政治的なポジションとしての皇后と、宮中祭祀など巫女的役割を担った二人の皇后がいたのではないか、その点にのみフォーカスし、血の継承問題については特に分析の対象とはしていませんでした。

そこで、偶然?にも二度目撃した「XX」に鑑み、ここではこれまでのダリフラ分析に新たに女系継承の視点を取り入れてみようと思い立った訳なのです。

これまでのダリフラ関連記事:

 1)2019年3月30日 “ダリフラ”、タイトルに隠された暗号 
 2)2019年4月2日 太宰府で繋がる新元号とダリフラ 
 3)2020年2月27日 ダリフラのプリンセスプリンセス 

さて、タイトル画以外に「XX」の意味について触れたシーンが作中に一箇所あるので、まずはそこを押さえておきましょう。

画像3:生体兵器「叫竜」(きょりゅう)の肉体はXX(女性遺伝子)で構成されている
(第20話より)

アニメの設定における位置付けはともかく、画像3をのシーンを見る限り、少なくとも「XX」がX染色体、すなわち「女性遺伝子」を指していることは明らかです。問題なのは、画像2のタイトル画で象徴されるように、何故「女性」と「遺伝」をここまで強調するのかその点なのです。

単純に考えれば、これは女性の特性が遺伝的に続くこと、すなわち女系の血の継承を表現しているのではないかと取れるのですが、いかがでしょうか?

これまでの分析により、アニメの主人公である少女「02」(ゼロツー)は、その数字が「鬼」を表すことから、鬼道(呪術)の使い手で知られる卑弥呼、そしてその実体である神武天皇の皇后、媛蹈輔五十鈴媛(ヒメタタライスズヒメ)をモデルにしているだろうと予想しています。

また、「媛」ヒメの字がその名に2箇所使われていることから、恐らくこれが双子の皇后の存在を表すであろうとも結論付けています。アニメでは「ゼロツー」が「叫竜の姫」の遺伝子クローンという設定になっていますので、これはまさにヒメタタライスズヒメが双子であることを遠回しに表現しているのではないかと捉えたのです。

これらを少女神の視点から更に表現し直すと

 双子の皇后ヒメタタライスズヒメは、特定女系の血を引き継いでいる

となるのです。

実は、この予想を補足する作品中のメッセージとして、次の登場人物のネーミングが大きな意味を持つことに後から気付きました。

画像4:二人の主人公の世話役「ハチ」(008?)(右)と「ナナ」(007/077?)(左)

二人の役どころは、主人公達を含む「子供」と呼ばれる少年・少女戦闘員の世話役、物語の最後では彼らの親代わりというポジションに移るのですが、まずここで親子という世代継承のニュアンスが表現されているのが分かります。

しかし、数字をそのまま読み替えただけだろうこの二人の名前は、より重大な意味を含んでいることが以下の分析から見出せるのです。なお、この二人に限っては、他のキャラには付けられているコードナンバーが何故だか設定上でも明記されていないので、「ハチ」については「8」、「ナナ」については「77」の数字を割り当てることにします。

画像5:二人の名は「皇后」を表す。

3桁の数字「123」が「天皇」の意味を持つことは(真)ブログ記事「新嘗祭イヴの呪い」をご確認頂きたいのですが、実はこの場合「877」という数字が転じて「皇后」を意味することはこれまで説明したことはありませんでした。

どうしてそう言えるのかは、画像5を見ればお分かりの様に、この二つの数字が加算された時に初めて新しく4桁目が生じる、すなわち、天皇と皇后の組み合わせが新しい次の世代を生み出すと解釈できることに拠るのです。

ここまで来ると、「ハチ」と「ナナ」のネーミングは適当に付けられたものとは考えにくく、明らかにこれは、「皇后」に関連するメッセージを強く含んでいると考えられるのです。

古代史ならず日本の歴史の主役は「天皇」であると私たちは考えがちですが、どうやらダリフラが意図する歴史的視点は、皇后の輩出家系についても大いに注目しているようなのです。

■ヒメタタライスズヒメと三嶋溝橛

さてここで、ダリフラにおいて角の有る美少女キャラのモデルとなったであろうヒメタタライスズヒメが史書の中でどのように記述されているかを確認してみます。

此の神の子は、即ち甘茂君等(かものきみたち)・大三輪君等、又姫蹈韛五十鈴姫命なり。又日はく、事代主神、八尋熊鰐(やひろわに)に化為(な)りて、三嶋の溝樴姫(みぞくひひめ)、或は云はく、玉櫛姫(たまくしひめ)といふに通ひたまふ。而して児姫 蹈韛 五十鈴姫命を生みたまふ。是を神日本磐余彦火火出見天皇(かむやまといはれびこほほでみのすめらみこと[=神武天皇])の后(きさき)とす

日本書紀神代上第八段一書から

これの他に、次の箇所でも登場します。

庚申年(かのえさるのとし)の秋八月(あきはづき)の癸丑(みづのとうし)の朔(ついたち)戊辰(つちのえたつのひ)に、天皇、正妃(むかひめ)を立てむとす。改めて広く華輩(よきやから)を求めたまふ。時に、人有りて奏して日さく、「事代主神、三嶋溝橛耳神(みしまみぞくひみみのかみ)の女(むすめ)玉櫛媛(たまくしひめ)に共(みあひ)して生める児を、号(なづ)けて媛蹈輔五十鈴媛命と日す。是、国色(かほ)秀れたる者なり」とまうす。天皇悦びたまふ。

日本書紀神武天皇記本文から

以上から、書紀では神武天皇の正皇后であるヒメタタライスズヒメは事代主神と玉櫛姫の間に生まれた子と記述されているのですが、秀真伝ではその辺の関係性が少し異なります。

画像6:秀真伝によるヒメタタライスズヒメの系譜

上図の様に、秀真伝によれば玉櫛姫を娶った事代主と言うのは、同じ事代主でも孫の世代に当たる「ヤヱコトシロヌシ」を指すようなのです。

事代主は皇統の代で言えば瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)と同世代になりますから、その娘が瓊瓊杵尊のひ孫に当たる神武天皇の后になるというのは少し不自然です。ですから、同じく事代主のひ孫世代がヒメタタライスズヒメとなる秀真伝の記述の方が、より真実に近いと考えられます。

さて、今回の注目点は「少女神」ですから、そうなるとどうしても気になるのが、画像6でも示した、皇后を輩出した家系

 三嶋溝橛(みしまみぞくひ)

とは何者なのか、その点なのです。残念ながら、秀真伝でも三嶋溝橛の妻の名、およびそれより遡った系図は出ていません。

少女神と言う概念を初めて取り上げた記事「少女神の系譜と日本の王」で、私は「みシまる 湟耳(こうみみ)」氏が書かれた本「少女神 ヤタガラスの娘」を紹介しましたが、その中でネタバレ防止の為、次の様に一部を伏せて書いている箇所があります。

古代皇統の権威は特定家系である「☆☆☆」家の少女の元へ入婿することによって引き継がれてきた

もうお分かりのように、この伏字に入る文字は

 ミシマ

なのです。また、著者が三嶋溝橛にたいへん注目していることは、ペンネームの「みシまる」に如実に表れているとも言えるでしょう。

これまで、国内少女神の家系として、伊弉冉尊(いざなみのみこと)から始まる、下照姫の家系、月読尊の家系を予想していましたが、今回登場した三嶋溝橛がそのどちらかの系統に繋がる血筋なのか、あるいは全く別の女系一家なのか、新たなる謎が加わることになりました。

ダリフラというアニメは、素人目に見ても相当に脚本を練った作品、あるいは古代史情報をふんだんに詰め込んだ作品と認められるのですが、ここまで出してくる目的とはいったい何なのか?表現者のその意図を含め、今後の分析が求められるのです。

■大空のXXが意味するもの

次の2つの写真は、空にXXが出現した当日の調査対象です。

画像7:香良須(カラス)神社 愛知県豊田市市木町(令和4年4月11日撮影)
画像8:三島神社 千葉県君津市糠田(令和5年1月6日撮影)

香良須神社はみシまる氏の著書に書かれていたことから、半ば興味本位で向かった場所ではあるのですが、現地の客観的な情報からだけでも次の点が窺えます。

 祭神は稚日女尊(わかひるめのみこと)→ ワカヒメ → 下照姫(少女神)
 所在地は市木町(いちきまち) → イチキ → 市杵島姫(少女神)

そして、君津の三島神社については特に語る必要はないでしょう。

大空のXXが少女神調査との関りで出現したものなのか、それとも単なる偶然なのか、それは私にもよくわかりません。ただ、このテーマが日本(にほん)という国の成立ちを知る上で、避けて通れないものであることを、ひしひしと感じるのです。


賀茂川を上りて向かう姫宮は紅差す御身の清き里なり
管理人 日月土

SPY×FAMILYに見る月読と市杵島姫

今月25日の(真)ブログ記事「国家権力動員のSPY×FAMILY」では、現在放映中の人気アニメ「SPY×FAMILY」を題材に、そこに登場する角の生えた少女キャラクターが、古代皇后兼巫女であったいわゆる「少女神」をモデルとして描かれているのではないか、そして、彼女たちが取り上げられる最大の理由が、その存在を抹殺せんが為の呪詛なのではないかと述べています。

画像1:SPY×FAMILY 
(C)遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

呪詛と言うとオカルトぽくなってしまいますが、日本書紀や古事記などの史書で事実と異なる記述が明らかな場合も、それが事実を捻じ曲げ特定個人を貶めるという点では、やはりそれは呪詛や呪いの類と見なすことができます。

「呪詛」というどこか思想的な観念を持ち出すのは、単に史書から都合の悪い事実を伏せれば良いだけのことなのに、わざわざ特定個人を貶める記述を加えるという行為に、どこか現実的な損得を超えた強い悪意と憎悪を感じるからです。

私は、記紀及びその他の史書についてもそこに大きな改竄が加えられていると考えていますが、それが、登場人物に侮蔑的な名前が付けられていたり、その行為が悪し様あるいは嘲笑的に書かれている場合は、やはりそれも呪詛の一形態であると捉えています。

その意味では、現代メディアがやってることも全く同じで、映画やドラマ、そしてアニメ作品においても、昔ながらの「言葉による呪い」が込められており、その呪いが歴史上の特定人物に向けられているケースをこれまで幾つかご紹介してきました。

しかし、これを逆手に使えば、作品に込められている呪詛の形態から歴史的事実を辿れると考え、実際にその手法を用いてこれまでに「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」など大ヒットアニメに隠された古代日本の実相を分析してきました。

アニメ「SPY×FAMILY」もそれら呪詛的作品の例外ではなく、おそらくその背後には、隠された歴史的事実が存在するであろうと思われるのです。

■ヨルの名に隠された暗号

このアニメの主人公は「鬼の角型髪飾り」を付けた少女「アーニャ」ですが、ここではまず、その仮の母親であるヨルに注目します。

画像2:ヨル

このヨルさん、コードネーム茨姫(いばらひめ)の異名を持つプロの殺し屋で、運動能力が極めて高いという設定以外にこれと言った情報は付加されていないのですが、このヨルという名前をそのまま日本語の「夜」と解釈して良いことは、スパイである旦那役(ロイド)のコードネームが黄昏(たそがれ)であることから容易に察しが付きます。「黄昏に続いて夜が来る」ということです。

それでは次に「夜」に対応する歴史上の人物とは誰なのかを考察してみます。

これまでに少女神の分析を行ってきた対象が、日本書紀・古事記共に神代が中心であったことから、ここでも同時代の記述について調べてみることにします。

「夜」の字で記紀の神代原文を全文検索した場合、明らかに人名(あるいは神名)の一部として現れるケースは

 古事記:
  火之藝速男神(ひのやぎはやをのかみ)
  波邇須毘古神(はにやすびこのかみ)
  波邇須毘賣神(はにやすひめのかみ)
 
 日本書紀:
  月見尊(つきよみのみこと)
 
となります。

これでは両史書の間で共通項が見当たらないことになりますが、実は古事記には次の様な「夜」の記述があるのです。

 次詔月讀命「汝命者、所知夜之食國矣。」事依也。

次に月読命に詔りたまはく、「汝命(いましみこと)は、夜の食国(おすくに)を知らせ」と事依(ことよ)さしき。

ここでは表記の違いにご留意ください。「月夜見=月読=月讀(つきよみ)」であり、以下は「月読」で表記を統一します。

「夜の食す国」とはまさに夜の帳が降りた世界のことであり月読はまさに「夜」の統治者であると記されているのです。これは、月の美しく輝くのが夜の間であるという自然現象をそのまま詩的に表現しているとも言えますね。

以上から、記紀の神代記における「夜(ヨル)」の称号を持たされた人物(あるいは神)とは月読尊(つきよみのみこと)のことであろうと断定してよいのですが、問題なのはその性別なのです。

アニメにおけるヨルの性別は女性ですが、記紀では不詳、秀真伝では男性とされています。この性別問題については、前回記事「月読尊 - 隠された少女神」で提示した仮説を適用し、「ヨル(夜)」が月読尊を指す記号と解釈した上で、その性別はアニメが示すそのままに「女性」であった、即ち伊弉冉(イザナミ)の血を受け継ぐ少女神であったと解釈することにしたいと思います。

■アーニャは市杵島姫なのか

前回の仮説が適用できるとする根拠は、史書類から女系の血筋が隠されている(史実が改竄されている)のではないかと疑うところにあるので、その流れに従うと、当然ながら女性月読には娘がいたと考えざるを得ません。

秀真伝では男性月読に気吹戸主(いぶきどぬし)という息子が居たとの記述がありますが、この場合、こちらも女系を隠す意図の下で改竄されていると見なすべきで、実際には気吹戸主の嫁とされている市杵島姫(いちきしまひめ)が実の娘に当たるのではないかと見ることができます。

すると、ヨルとアーニャの母娘関係(偽装家族ではありますが)はそのまま次の様な対応関係になると考えられるのです

   母     娘
 —————————–
  ヨル → アーニャ
  月読 → 市杵島姫

すなわち、ヨルが月読を表す記号的存在ならば、アーニャも同じく市杵島姫を表していると見なすことができます。

画像3:アーニャは市杵島姫を象徴しているのか?

アニメの中で、アーニャは人の心を読む超能力を有する少女として描かれているのですが、これは神の託宣を受け取る特殊能力者であった古代巫女、すなわち少女神を表現しているとも取れるのですがどうでしょうか?

神話の中では、市杵島姫は宗像三女神の一人として誕生するのですが、全国の神社を回ってみると、三女神の中でも市杵島姫はとりわけ手厚く祀られている(あるいは封印されている)ように感じるのです。

厳島神社(いつくしまじんじゃ)と聞けば広島県の宮島にあるものが夙に有名です。ここでは宗像三女神を祀っているのですが、摂社・末社などの小社として全国に建てられている厳島神社の祭神は、基本的に市杵島姫を祀るお社として認識されている場合が多いようです(具体的に調べた訳ではありません)。

画像4:宮島の厳島神社

よく考えてみたら「いちきしま」と「いつくしま」は発声がそっくりで、ここからも厳島神社が基本的に市杵島姫を主な祭神としていた証であることが見て取れます。

また全国に多く見られる仏教の弁財天(弁天様)も、本地垂迹説的には市杵島姫と同一視されることが多く、やはり宗像三女神の中では市杵島姫が特別扱いされていると考えられるのです。

それが隠された少女神の血筋に由来することなのかどうか、現在はこれ以上深読みできないのですが、これについては、アニメ放送の今後の展開を見て再度考察を加えたいと思います。

■呪われた少女神

アーニャの鬼の角のような髪飾りと大好物のピーナッツ。これが節分の豆撒きにおける鬼と炒り豆の関係に相当し、鬼とされた存在に向けた呪いであることを上記(真)ブログ記事では述べています。

すなわち、これはアーニャへの呪いでもあり、同時に「市杵島姫への呪い」とも取れる訳ですが、一方ヨルの方は、血塗られた殺し屋の顔を持つ女として描かれています。

画像5:ヨル、依頼を受ければ殺し屋となる

茨姫と呼ばれる血塗られた女、それがどのような悪意を込めた呪いなのかは不明ですが、あまり聞こえの良いものでないのは事実です。少なくともそのモデルであろう月読を敬っていないのは確かだと言えます。

血塗られた女に炒り豆を投げつけられる鬼女、少女神に対する呪いとしてはもはや散々なのですが、実はこのアニメと放映時期を同じくして、この二人の特徴を併せ持つ次の特異なキャラクターが別の作品に登場しているのをご存知でしょうか?

画像6:チェンソーマンから血の魔人パワー
(C)藤本タツキ/集英社・MAPPA

単なる偶然だとは思いますがどこか引っ掛かるのです。そう言えば両作品共に出版元は同じ集英社ですね。また、遠藤達哉氏は藤本タツキ氏のアシスタントを務めていたこともあるそうです。


寒風に追われて辿るこの道はい笑ます君の宮へ誘う
管理人 日月土